Ken's Veterinary Clinic Tokyo

相談専門 動物クリニック

                               

















































































































































































































































院長のコラム 2019年3月6日


『オンライン診療について』







オンライン診療について




2019年3月6日

皆様、KVC Tokyo 院長 藤野 健です。

 当クリニックホームページの <よくある質問> のページにて、動物用医薬品、漢方薬の処方はしてもらえますか?の問いに対し、お薬に関しては、獣医師として最初の 1回は動物を直接診断の上、処方・投薬することが強く望まれます (獣医師法第18条の規定)と院長は答えています。

 これについて話を expand  しましょう。






病院に行かなくてもOK スマホでの診療に保険適用(18/04/01)

ANNnewsCH https://youtu.be/ElU_TzOWeHc

医療の分野では、スマートフォンなどを使った「オンライン診療」に1日から保険が適用されます。 

4月から厚生労働省は、原則として初診は対面で診療した後、患者の症状が安定すれば2

回目以降にスマートフォンやタブレットを使ったオンライン診療を認めます。






 人の医療の場合ですが、高齢者ばかりの孤立集落が増加し、患者と医者の側が物理的に接触するのがほぼ不可能なケースが生じ、社会問題化もしつつある現況ですが、これにどう対処すべきかの議論が始まっています。一度オペを受け心臓ペースメーカを埋め込んだ患者が電話回線で時々波形を送り医師の診察を受ける例は開始されて既に 40年ほど経過すると思いますが、問題は初診の患者をどう扱うかに尽きると思います。

 遠隔医療に関しては、下記の様な取り組みが盛んに行われています。白熱した遣り取りが行われた様子です。

オンライン診療料、迫井審議官が改定の真意語る

オンライン診療研究会シンポ、各学会での検討の必要性を強調

1第1回公開オンライン診療研究会シンポジウム

2018年12月9日

https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/646643/


 孤立集落以外の話としても、営利活動ゆえここでは個別の紹介は控えますが、<オンライン診療> で検索すると、既に幾つかの企業がシステムを販売し、それを導入したクリニックの紹介事例も得られます。初診は飽くまで対面で行うべきとの注意喚起が為されていますが、「浸透」していないとも言及されています。実際には初診で対面することなく、薬剤を処方するケースは院長も確認しています。医師法的には灰色ですが、厚生省側も様子見しているところでしょうか。

 この様なシステムの導入後には、予約、自宅での受診、支払い決算なども可能となり、混雑した中を待たされ、院内感染を受けたり与えたりの弊害も無くなり、公衆衛生面でもメリットは相当程度高いものと実際院長も感じます。風邪を引いて小児科を受診したはいいが、予防接種前に麻疹 (はしか) に感染し、重篤な状態に陥った、では洒落になりません。






Online doctors bypassing health-care system CBC News:

New virtual medical clinics are taking hold in Canada, and while patients who can afford

the service are taking advantage, it could create problems for the public system.


オンライン診療システムはカナダでも根付きつつあり、そのサービスを受ける余裕の

有る患者には利点がある一方、既存の公的な保健システムに影響を与えています。






 人間の医療の方は厚生省が管轄していますが、獣医診療の場合は農水省が乗り出し、最後は獣医師法改正に至るとの段取りですね。

 獣医療のケースでは (人間の医療でも然りですが)、重篤な、或いは緊急を要する疾病、疾患等に対しては、動物を直接目の当たりにしての検査並びに確定診断、そして治療に取り掛かるべきは当然ですが、既に他医にて確定診断を得、その後に慢性的な状態が継続し、飼い主様側で 血圧、脈拍数、呼吸数、体温の推移などを記録したデータを準備し、これまでの疾病・疾患の経過、他医での獣医療受診状況を問診し、これらを遠隔で遣り取りする場合は、その医療行為も 「自ら診察する」と規定される様に法律が改定される可能性はあるでしょう。

http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search

/lsg0500/detail?lawId=324AC0000000186#D

獣医師法(昭和二十四年法律第百八十六号)

第4章 業務

第十八条 獣医師は、自ら診察しないで診断書を交付し、若しくは劇毒薬、生物学的製剤その他農林水産省令で定める医薬品の投与若しくは処方若しくは再生医療等製品(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第二条第九項に規定する再生医療等製品をいい、農林水産省令で定めるものに限る。第二十九条第二号において同じ。)の使用若しくは処方をし、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証明書を交付し、又は自ら検案しないで検案書を交付してはならない。ただし、診療中死亡した場合に交付する死亡診断書については、この限りでない。

 との条文があります。冒頭の、「自ら診察しないで」の下りが今後明確化される可能性はあるとの話です。

 近年はいわゆるスマートウォッチの類いが手頃な金額で入手出来る様になり、身体に取り付ける小型の装置と併用することによって、睡眠時の状態や一日の運動状況、運動の質、消費カロリーまでもが分かるものが出ています。これらの機材 (動物用)の精度が公的機関等のテストをパスするなどし、得られたデータの信用性が高いものとなれば、飼い主様側に対して十分な注意を与えた上で、緩い作用の動物用医薬等に限定し、処方して良い様にも院長は考えます。緩い作用の医薬品とは、人間の医療で言う降圧剤や東洋医学の薬剤等ですね。初診以降、時々遠隔診察し、必要であれば服用量の増減等について飼い主様側に細やかな指示を行えばよいでしょう。

 動物用のデータ収集用機材としては、

Anicall 社の動物用各種デバイス。開発中の製品もある模様です。

http://www.anicall.info/


下記後半に紹介記事あり

犬やネコに心拍センサー、組み替えできるスマートウォッチ〜「第4回ウェアラブルEXPO」

https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/1040138.html

 などが世に出始めています。

 慢性疾患或いは高齢のため、起立不能、或いはそれに近い状態の飼育動物は、近医に受診する自体が困難ですが、獣医師側が車で往診してその場で採血、採尿、触診、聴診、超音波診断等の軽度な検査を行ったにせよ (CTやMRI機材を搭載した大型トラックを利用しての往診は考えられませんね)、診断の主たる材料は結局過去の治療歴の問診となるでしょう。往診に出かけたところで獣医師側には出来ることに限界があると言うことです。寧ろ、自分の住むところに第三者が入り込んで身体をいじられる事は動物側には大きなストレスとなり、診療後に病状が不安定化する弊害が発生する可能性はゼロではなく、これを避ける事ができます。この様なことを鑑みると、遣り取りする情報並びにその記録の正確性が担保される限りに於いて、一部に於いて初診の遠隔診断を可とすべき合理性はあると考えます。

  往診に気軽に応じてくれる開業医が近くに見付かれば最善ですが、そうではない場合には、遠隔で診療してくれる獣医師を探し出して対応を図る、との流れです。

 現状でも 「劇毒薬、生物学的製剤その他農林水産省令で定める医薬品若しくは農林水産省令で定める再生医療等製品」以外のものは、獣医師の 「自らの診断無し」で投与などは可能ですが、サプリメント類などがこれに該当するでしょう。漢方薬 (の一部) もこれに含めて良い可能性もありますが、実施に当たっては事前に必ず農林水産省の担当官と相談すべきでしょうね。

 当クリニック院長は、遠隔診療、診断に基づく医薬品等の処方、投与は現況では考えていません。様子見しているところですがご了解ください。また、個人輸入等を通じて駆虫薬、その他の治療薬を購入したが使い方を教えて欲しい等のご相談は一切お断りしています。獣医師として責任を持って対応することが不可能だからです。

 飼い主様側、獣医師側双方に利益のある方向に、法律が改定されて行くことを望んでいます。