逆立ちする動物 A マダラスカンク |
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2019年6月25日 (2021年6月6日 チオールの説明追記) 皆様、KVC Tokyo 院長 藤野 健です。 前回、マングース科の動物 コビトマングースの逆立ちマーキング動作を紹介しました。イタチ科に近いスカンク科のスカンクは肛門腺からの液体の噴霧攻撃並びにその悪臭被害の大きさで有名ですが、中でも米国南部〜中米に棲息する小型のマダラスカンク属の4種は、発射前には skunk dance としてよく知られている威嚇の逆立ち歩きをします。今回はこのスカンクを採り上げ、逆立ちの実態に幾らか迫りたいと思います。 以下本コラム執筆のための参考サイトhttps://ja.wikipedia.org/wiki/スカンクhttps://en.wikipedia.org/wiki/Mephitidaehttps://ja.wikipedia.org/wiki/マダラスカンク属https://en.wikipedia.org/wiki/Spotted_skunkブチルメルカプタン 別名ブタンチオールhttps://ja.wikipedia.org/wiki/チオールhttps://en.wikipedia.org/wiki/Thiolhttps://ja.wikipedia.org/wiki/付臭https://ja.wikipedia.org/wiki/tert-ブチルアルコールhttps://en.wikipedia.org/wiki/Tert-Butyl_alcoholhttps://ja.cekmekoyevdenevenakliyat.org/wiki/Thiol「スカンクのスプレーは、主に低分子量のチオールと誘導体で構成されています。」 |
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skunk dance の記事を紹介しましょう。If you see a skunk dance like this, get awaySpotted skunks perform a 'handstand dance' for intimidation.Russell McLendonhttps://www.mnn.com/earth-matters/animals/blogs/spotted-skunk-handstand-dance May 11, 2018, 8:33 a.m. から以下抜粋"Like the other three groups of skunks, spotted skunks are capable of spraying a strongunpleasant scent as a form of defense," the National Park Service wrote in a 2015 Facebookpost about the video. "But before spraying, spotted skunks will sometimes go into a handstandand attempt to intimidate any would-be aggressors like this wildlife camera, placed in Happy Valley."The display begins with the skunk standing upright on its forelimbs, with its tail and hind legs upin the air, and may also involve other intimidation t actics like stomping, hissing, charging,scratching and aiming, according to the University of Michigan Museum of Zoology's AnimalDiversity Web (ADW).This dance may not directly reveal the skunk's next move, but it's no idle threat.If dancing fails to intimidate a potential predator, the skunk can resort to its real weapons: apair of scent glands, one on each side of its anus, that spray a foul-smelling musk. "The skunkgenerally aims for the attacker's eyes, temporarily blinding it as well as assaulting its olfactionwith the yellowish-colored butyl mercaptan-containing liquid, which can be ejected up to 10feet," the ADW explains.A spotted skunk can reportedly hold about 15 grams (1 tablespoon) of this oil, which is slightlydifferent from the oil of a striped skunk, and release it in a rapid-fire burst of sprays. It may takea week to replenish the oil once it's depleted, though, so handstands could offer a more sustainable way to fend off troublemakers. In the video below, a spotted skunk repeatedly uses this technique to repel a fox:Still, if you ever find yourself watching a skunk dance like this in person, don't count on anysecond chances. Otherwise, you may need this recipe from the ADW:"One remedy for skunk odor is 1 quart 3% hydrogen peroxide (from the pharmacy), 1/4 cupbaking soda and 1 teaspoon liquid soap. Wash and rinse, keeping away from eyes, nose and mouth." |
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以下和訳他の3グループのスカンクと同様、防御形式としてマダラスカンクは強烈に不快な悪臭をまき散らす。国立公園局は2015年のフェイスブックのこのビデオの投稿で以下の様に書いている。「Happy Valley に設置された野生動物撮影用カメラに映っている様に、撒布の前に、時々逆立ちし、攻撃者となろう何者に対しても脅しに掛かるのだ」ミシガン大学動物学博物館の動物多様性ウェブサイト(ADW)に拠れば、この示威行動は、前肢で直立に立ち上がり、尻尾と後肢を空中に突き出して始まるが、足を踏みならしたり、シューと音を立てたり、突進したり、引っ掻いたり、狙いを付けたりと言った他の脅しの方法を取る時もある。このダンスは、スカンクが次になにをするのかを直接示すものではないが、無駄な脅しとは全く違う。捕食者となり得る者への威嚇に失敗した場合、スカンクはその最終兵器−肛門の左右に一つずつある一対の臭腺から悪臭のある分泌物をまき散らす−に訴える事が出来るのだ。最大3mまで射出され得る黄色みを帯びたブチルメルカプタン液を噴射して、たいていは攻撃者の目を標的にし、一時的に盲目にさせ、また嗅覚に対しても攻撃を加える、とADW は説明する。報じられるところでは、マダラスカンクはシマスカンクの油分とは軽度に異なる15グラム(スプーン1杯)のこの油を保持しており、急速な連続発射でまき散らす。一旦カラになると補充するのに一週間程度を要すが、それでも逆立ち動作は妨害者からの攻撃を遣り過ごす為の、より持続可能な方法とはなり得る。下のビデオではマダラスカンクはキツネを追い払うためにこのテクニックを繰り返し使っている。もし自分自身が生でこの様なスカンクダンスを目にしていることに気が付いたならば、今回は大丈夫だろうなどと考えてはいけない。さもなければ、以下のADW のレシピが必要になるかも知れない:<スカンクの臭気に対する1療法は、3%の過酸化水素水1クォート(0.946リットル)(薬局で購入)、1/4カップの重曹、スプーン1杯の液体洗剤を用い、目、鼻、口に入らぬ様注意しながら洗い、濯ぐ>。 |
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また以下の様な記述もありました:https://animaldiversity.org/accounts/Spilogale_pygmaea/Spilogale pygmaea pygmy spotted skunkBehaviorThe Spotted Skunks first reaction in time of danger is to flee. When cornered they engage inan offensive display. They attempt to inflate themselves and raise their tail. They then stand ontheir front legs and may even advance towards their percieved attacker in this position. If thethreat is still not abated they drop back to all fours and bend themselves into a U, aiming at theirattacker. It is then they release the familiar scent in a cloud of droplets.ピグミー・マダラスカンク行動(抜粋)マダラスカンクが危険に遭遇した場合の最初の行動は逃避である。逃げられないと感じた時には攻撃行動に出る。身体を膨らませ尾を挙げるのだ。次に、前肢で立ち上がり、その姿勢のまま敵であると知覚している攻撃者に向かって進んだりさえもする。脅威がまだ軽減されないのであれば、4つ足に戻り、自身をUの字に曲げ攻撃者に狙いを付ける。例の匂いのしずくの霧をまき散らすのだ。 他のスカンクと異なり、マダラスカンク属の 4種のみが自立式の逆立ち動作を可能とするのは、矢張りボディサイズの小ささ (体重は 0.2kg−1kg) が物を言っているからだろうと考えます。体重が増大するとこの動作が困難になるものと予想されます。首を反らすことから頸椎の関節角度が大きく、また、手の関節を反らす許容角度並びに体重を支えるための関節強度や筋の構築も、他のスカンク類と比較すると差が出ている可能性もありますが、形態的な差は僅かかも知れません。これが大きいサイズの動物で同様の動作を定型的に行うのであれば、力学的要請から形態的な違いはより明瞭なものとなる筈です。哺乳動物で独立式の(媒体に寄り掛からない)逆立ちを定型的動作として行うのは、マダラスカンクのみではないかと思います。逆立ちを維持すべく、手の位置を随時ずらして地面に着けば、自ずとヨタヨタ式の歩行もどきにはなりますが、この逆立ち歩行が方向性を明確にし得、目指した方向へと進める様に至れば、逆立ち二足 (二手)歩行は完成に近づきますが、マダラスカンクは普段は四足歩行しますので (これの方がラク)、完成度を高めて逆立ち二手歩行オンリーにロコモーションが取って代わる理由は見いだせません。飽くまで警告・威嚇動作としての役目の逆立ち歩行に留まるでしょう。前回コラムでも触れましたが、この様な理由から (逆立ち)二足歩行が成立したと考えれば、ヒトの二足歩行成立に関しての考察をより深いものとすることが出来るでしょうね。 ブチルメルカプタンが発射されるとされていますが、実際には、スカンクのスプレーは主に低分子量のチオール(アルコールの-OH 基が-SH に置き換わった物質)と誘導体で構成されています。チオールは酸化され易く、それゆえ過酸化水素水 (オキシフル)の混合液で洗浄するとのレシピですが、現在、過酸化水素水は発癌性が判明し、人体への使用は奨められません。原子状の酸素が遺伝子損傷作用を有する訳ですが、悪臭は取れたは良いが癌の危険がある、では困りますね。ブチルメルカプタン (ブタンチオール) はブチルアルコール (ブタン、C4H9OH)の酸素原子が硫黄原子に置き換わった構造 C4H9SH の化学物質です。近い化学構造の tert-ブチルメルカプタンはガスに添加される臭気の1つでもあります。チオール類は細胞親和性が高く、皮膚などに着くと匂いが抜けません。目に直撃を受けると一時的な失明どころか角膜損傷で永久に失明するおそれもありそうです。鼻粘膜に存在する銅原子に強力に結び付く様ですね。この物質を合成・貯蔵・まき散らすスカンク自身には問題がない模様ですが、どうなっているのでしょうか?肛門腺周辺の上皮組織がチオール耐性を獲得していることも予想されます。 まぁ、米国旅行中にスカンクと出くわした時には兎にも角にも逃げるに如かず、が何よりですね。狂犬病に罹患していて突進して来て噛み付くおそれさえあります。日本の様に基本はどこでもキャンプ出来る様な土地ではありません。 |
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