キツネの話A 南米のキツネT |
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2019年9月1日 皆様、KVC Tokyo 院長 藤野 健です。 前回は、進化的にはイヌ科の祖先系に近い存在であるキツネもどき、ハイイロギツネ(北米〜中米に分布)並びに準祖先系のオオミミギツネ(アフリカ東部、南部に分布)−これらは本家のキツネ(きつね色をした Red fox を含む一大勢力)の周りに孤立した系統の枝として存在する−についてお話ししました。今回と次回の2度に亘り、今度は南米に棲息するキツネもどきを採り上げます。 地球の裏側のこともあり、只さえ分かり難いイヌ科の系統について、なにがどうなっているのかオレ・ワタシもう付いていけない、とお感じの方々も多かろうと察するところですが、毒を喰らわば皿までではありませんが、ここは1つクールな気持になり、本コラムをお読み戴くのもけして損なことではなかろうと思います。 以下、本コラム作成の為の参考サイト:https://en.wikipedia.org/wiki/Foxhttps://en.wikipedia.org/wiki/South_American_fox南米キツネ:カニクイイヌhttps://en.wikipedia.org/wiki/Crab-eating_foxhttps://ja.wikipedia.org/wiki/カニクイイヌhttp://animaldiversity.org/accounts/Cerdocyon_thous/コミミイヌhttps://en.wikipedia.org/wiki/Short-eared_doghttps://ja.wikipedia.org/wiki/コミミイヌhttps://bioweb.bio/faunaweb/mammaliaweb/FichaEspecie/Atelocynus%20microtishttps://web.archive.org/web/20120216235441/http://www.canids.org/species/Short-eared_dog.pdfクルペオギツネhttps://en.wikipedia.org/wiki/Culpeohttps://ja.wikipedia.org/wiki/クルペオギツネスジオイヌhttps://en.wikipedia.org/wiki/Hoary_foxhttps://ja.wikipedia.org/wiki/スジオイヌセチュラギツネhttps://en.wikipedia.org/wiki/Sechuran_foxhttps://ja.wikipedia.org/wiki/セチュラギツネ熊本市動植物園http://www.ezooko.jp/https://ja.wikipedia.org/wiki/シフゾウ |
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院長コラム、イヌ科の系統分類Cにて紹介した論文の図7の系統樹をまたまたご覧戴きたいのですが、オオミミギツネ Bat-eared fox、Raccoon dog タヌキ、それと本家キツネを派生した残りの集団は、更に旧世界+北米系のイヌと南米系のイヌとの大きな集団に2分しますが、その中の南米イヌに、Crab-eating fox カニクイイヌ, Culpeo fox クルペオギツネ, Hoary fox スジオイヌ, Sechuran fox セチュラギツネなるものが見られます。これらの一群は、以前紹介したBush dog ヤブイヌ並びに Maned wolf タテガミオオカミとは幾らか離れた系統ですが、これら南米のイヌ科動物は同じ祖先から分岐した親戚同士と考えて良いでしょう。本コラムでは、Crab-eating fox カニクイイヌに近いSmall-eared dog コミミイヌも 含めざっと紹介して行きますね。まぁ、或る意味、マニアックなイヌ科動物ばかりですが、ウチんとこの飼いイヌの親戚にも南米に移住?してがんばってるのが居るのかぁと、お楽しみ戴けたらと思います。 |
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カニクイイヌ Crab-eating fox Cerdocyon thous ニホンザルに近いマカク属のサルに、カニクイザル Crab-eating macaque がいるのですが、イヌ科にもカニクイイヌが居るとは面白く感じます。forrest fox 森キツネとも呼ばれますが、実際には熱帯雨林以外はなんでもござれで何処にでも棲息可能です。餌は小型の脊椎動物 (小型哺乳類からトカゲ、カエルまで)がメインですが、特に雨期にはカニを捕まえて食べている様です(乾期には代わりに昆虫の比率が高まります)。この様な食性が反映されてか、顔つきからは獰猛さが消え、まだしも優しい風情があります。 英名はカニクイギツネですが和名はイヌ扱いで、しかも学名Cerdocyon thous は、<thous ジャッカル風の cerdocyon キツネイヌ> ( 3つのギリシア語 kerdo =fox, cyon = dog 、thoos = jackal の合成) なる、ごちゃ混ぜの命名であり、イヌ科分類の混迷?ここに極まれり、との名称ですね。まぁ、系統が離れた進化の枝先のあちこちにイヌ、キツネ、ジャッカルが散らばっている中での命名で、或る意味、随分と感覚的に命名が為されたもんだとの感想を抱きます。遺伝子解析法が整わない昔日には、本種を系統分類するのは学者泣かせだったのかもしれません。尤も、外見的には南米に進出しようがイヌであることに違いはなく、誰でも、コイツはどう見てもイヌの仲間だと一瞬で理解することでしょう。 600万年前に出現し、北米には140万年まで棲息していました。310万年前には南米に現れ、その後ほぼ変わらぬ姿で現在にまで至っています。 余談ですが シフゾウと言うシカに近い動物がいて、角がシカ、首がラクダ、蹄がウシ、尾がロバに似ているが、そのどれでもない、何だかワカランと言う事で四不像と命名されました。院長は、家畜育種学の授業で上皇后美智子さまの伯父に当たる正田教授に引率されて多摩動物公園を訪れた時に現物を見ましたが、現在はどうなっているのでしょうか。シフゾウの方は学名はマトモな模様で Elaphurus davidianusです。因みに本年2019年7月に学会で熊本に出張した折に、熊本市動植物園に出かけたのですが、そこには上野動物園から譲渡されたシフゾウが数頭飼育展示されていました。・・・やはり只の<のっぺり鹿>の印象でした。 |
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コミミイヌ Small-eared dog Atelocynus microtis アフリカに棲息するオオミミギツネを前回採り上げましたが、今回は耳が小さい方です。英語では Small-eared dog または short-eared dog と表記されます。上記カニクイイヌとは近い関係にあります。どちらも耳介は小さめですがやはりコミミイヌの方が一段と小さいですね。英名、和名共に命名的にはキツネではなくイヌ扱いです。カニクイイヌが熱帯雨林以外の広域に棲息するのに対し、コミミイヌは人里から離れた密林中に棲息し、開けた場所には姿を現しません。ヤブイヌとは一部生活圏が競合します。耳が小さくなりまた指間に水かきがあるのは部分的な水中生活性への適応と考えられ、この点もヤブイヌとは類似します。尤も、ヤブイヌでは尻尾が短縮化していますが、本種では長く、フサフサの毛で覆われています。個体数は僅か15000頭以下と推測され、準絶滅危惧扱いです。イヌ科動物の中でも最も稀な種の1つです。webを検索しても十分な情報が得られず、研究面での解明も進んでいない様に見えます。アマゾンのジャングルの奥地に、まだ文明人とは非接触の部族が存在しているとの報道が以前為され、セスナ機に向かって矢を射ようとしている人たちの写真を見た記憶があります。孤立系に生きている生き物が余所からの人間と接触すると彼らが確実に持ち込むだろう筈の人間並びにイヌ等の感染症に罹患し、急激に壊滅的な影響を受ける危険性があります。コミミイヌに関しても慎重な対応を求めたいところです。 |
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