Ken's Veterinary Clinic Tokyo

相談専門 動物クリニック

                               






























































































































































































































































































院長のコラム 2020年3月20日 

ネズミの話3 形態T







ネズミの話3 形態T




2020年3月20日

 皆様、KVC Tokyo 院長 藤野 健です。

 ネズミのお話の第3回目、形態について扱います。初回ですのでざっくばらんに進めましょうか。



以下、本コラム作成の為の参考サイト:


https://ja.wikipedia.org/wiki/ネズミ


https://ja.wikipedia.org/wiki/鼠小僧


https://ja.wikipedia.org/wiki/歌川国貞


https://www.todayifoundout.com/index.php/2011/03/where-the-word-mouse-comes-from/


https://www.etymonline.com/word/muscle


https://en.wikipedia.org/wiki/Biceps

https://ja.wikipedia.org/wiki/上腕二頭筋


梵英−英梵辞書

https://spokensanskrit.org/index.php?mode=3&script

=hk&tran_input=mouse&direct=es&anz=100

* mouse = musaka, musika と出ます。







https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/9/9d/Kodanji_Ichikawa_IV_as_Nezumi

-koz%C5%8D_Jirokichi.jpg  三代目歌川豐國 / Toyokuni Utagawa III, Publicdomain, via

Wikimedia Commons

四代目市川小團次の鼠小僧次郎吉、安政元年正月江戸市村座『鼠小紋東君新形』

English: Kodanji Ichikawa IV (1812-66) as Nezumi-kozo Jirokichi, in the January1857

Edo Ichimuraza production of Nezumi Komon Haru no Shingata


<五尺に満たぬ小男で、動作敏捷の鳶人足>だったとのことで武家屋敷などスイスイと登りお手

のものだったのでしょう。まさしくネズミですね。英語での説明では3代目となり一方日本語では2

代目扱いですが正しくは3代目です。本人が2代目と名乗っていたと言う次第です。自分こそが

初代豊国の本当の後継者だぞと主張したかったのでしょう。






 前々回、ネズミもどきの項にて触れましたが、日本、そしておそらく中華圏に於いても、小さくてちょこまか動く哺乳動物をネズミと呼称する様ですね。地ネズミ、川ネズミ、麝香ネズミ、尖りネズミ、針ネズミは真のネズミの仲間ではなく食虫目の動物ですが、この内、ずんぐりして丸味を帯びた針ネズミは動きは確かにちょこまかしていますが、これ以外はほっそりした体型で尻尾も長いです。真のネズミの方も似た様な体型ですが、視覚の方は食虫目に比べるとだいぶ発達しています。

 身体のサイズが小さくて知能が高ければ、自然界の隠れ家を見つけることもたやすく、二乗三乗の法則から木登りなどの登攀行動も楽になりますし、地面に穴を掘ったり、或いは水中に穴を掘る詰まりは泳ぐことも出来ます。高いところから転落しても重力加速の付いた体重であっても四肢の筋肉でこともなげに支えることも出来ます。跳躍も簡単です。サツマイモの様な体型であれば各種センサーが集約している頭部先端をゾンデ (探索子)として利用し、状況を窺ったり隙間に潜ることも出来るでしょう。長い尻尾は登攀時には第5番目の体肢として把握に利用出来ますし、サーカスの綱渡り者がバーを手に渡るようにバランサーとしても利用出来ます。まぁ、忍者、はたまた鼠小僧次郎吉の様に何処にでも神出鬼没可能です。






https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/5/5f/Biceps_%28PSF%29.jpg

Pearson Scott Foresman, Public domain, via Wikimedia Commons

力こぶを作っているのが上腕二頭筋です。




https://cdn.pixabay.com/photo/2016/10/01/19/25/mouse-1708192_960_720.jpg


ハツカネズミですが形が上腕二頭筋と似ていますか?






 米国のトリビア情報のページに以下、ネズミの語源について分かり易い記事が掲載されていました:

https://www.todayifoundout.com/index.php/2011/03/where-the-word-mouse-comes-from/


“Mouse” comes from the Sanskrit word for mouse, “musuka”, which in turn derives from theSanskrit “mus” meaning “thief” or “robber”, presumably referring to the fact that mice like tosteal food from humans, particularly grains and fruits. The Ancient Romans then used the  word“mus” to refer to rodents and would distinguish between  mice and rats only by “big”  and “little”(“Mus Maximus”, big mouse, and “Mus Minimus”, little mouse).


 「Mouse はサンスクリット語の小型のネズミに対応する語 musuka に由来しますが、それはサンスクリット語の盗人、泥棒を言う mus から転じたものです。おそらく小型のネズミが人間から食料を、特に穀物と果実を好んで盗んだ事実を語ってのものでしょう。やがては古代ローマ人は齧歯類の動物を指す言葉として  mus  を使いましたが、身体の大小で単に区別していただけでした(ラテン語 Mus Maximus は大きいネズミ、Mus Minimus は小さいネズミの意)。」

(院長和訳)


 ハツカネズミ House mouse の学名はMus musculus ムス ムスクルス  (動物の学名は斜体、イタリックで表記する決まりがあります) ですが、musculus は小さなネズミの意味です。Mus 詰まりネズミ属の中の小さなネズミの意味となります。

 ネズミの形態のコラムなのになぜ名前の由来の話を続けるのかと疑問に思われた方も居ると思いますが、そろそろ答えを出しましょうか。

 英語で筋肉のことを muscle マッスルと言いますが、この言葉の語源は


https://www.etymonline.com/word/muscle

muscle (n.)

"contractible animal tissue consisting of bundles of fibers," late 14c., "a muscle of the  body,"from Latin musculus "a muscle," literally "a little mouse," diminutive of mus " mouse" (seemouse (n.)).


So called because the shape and movement of some muscles (notably biceps) were  thought toresemble mice. The analogy was made in Greek, too, where mys is both " mouse" and "muscle,"and its combining form gives the medical prefix myo-. Compare  also Old Church Slavonic mysi "mouse," mysica "arm;" German Maus "mouse; muscle,"  Arabic 'adalah "muscle," 'adal "fieldmouse;" Cornish logodenfer "calf of the leg,"  literally "mouse of the leg." In Middle English,lacerte, from the Latin word for "lizard,"  also was used as a word for a muscle.


muscle

 繊維の束から成る伸縮性の動物の組織 (14世紀後期)、つまり身体の筋肉。ラテン語の musculus 小さなネズミの意、縮小型はmus 即ちmouse。


 幾つかの筋 (二頭筋がよく知られる)のカタチと動きが mouse に類似しているからその様に呼ばれたと考えられている。ギリシア語でも似た様な事が起き、mys とは mouse と筋の両者を表し、その結合型は医学用語の接頭語 myo となった。古代教会スラヴ語 mysi: mouse, mysica: arm 腕、ドイツ語 Maus: mouse,muscle、アラビア語 adalar: muscle, adal: mouse、コーンウォール語(英ブリテン島の西南端で話されるケルト語) logodenfer: calf of the leg 足の子牛 = 足の mouse 足の筋肉、中世英語 lacerte はラテン語のトカゲに相当する語だが筋肉の意でも使用された。

(院長和訳)


 筋肉はカタチがネズミのカタチに似ていることから同じ名前となった事が分かります。昔の英語では筋肉を ネズミだけではなく トカゲにもなぞらえていたようですね。確かに上腕二頭筋 (ラテン学名Musculus  biceps  brachii  ムスクルス ビケプス ブラキイ 2つの頭を持つ筋) など細長くて両端が腱を持ちすぼんだ形態ですので遠目には紡錘形のネズミの形にちょっとは似ています。

 盗人→ネズミ→力こぶ→筋肉、と相成ったとのお話でした。