ネズミの話24 ネズミと病気 ハンタウイルス感染症Z |
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2020年7月5日 皆様、KVC Tokyo 院長 藤野 健です。 ドブネズミを含めた齧歯類感染症のお話の第7回目です。ハンタウイルス感染症の内の肺症候群 HPS について扱います。 引き続き https://www.cdc.gov/hantavirus/outbreaks/history.html からの和訳を掲載します。 以下、本コラム作成の為の参考サイト:https://ja.wikipedia.org/wiki/ハンタウイルスハンタウイルス肺症候群https://ja.wikipedia.org/wiki/ハンタウイルス肺症候群https://en.wikipedia.org/wiki/Hantavirus_pulmonary_syndrome厚生労働省研究班 バイオテロ対応ホームページhttps://h-crisis.niph.go.jp/bt/other/28detail/Mayo Clinic Hantavirus pulmonary syndromehttps://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/hantavirus-pulmonary-syndrome/symptoms-causes/syc-20351838https://ja.wikipedia.org/wiki/アウトブレイクhttps://ja.wikipedia.org/wiki/フォー・コーナーズ_(アメリカ合衆国)https://en.wikipedia.org/wiki/Four_CornersCDChttps://ja.wikipedia.org/wiki/アメリカ疾病予防管理センターMarsh rice rat (Oryzomys palustris)https://en.wikipedia.org/wiki/Marsh_rice_ratCotton rathttps://en.wikipedia.org/wiki/Cotton_ratHispid cotton rat (Sigmodon hispidus)https://en.wikipedia.org/wiki/Hispid_cotton_ratwhite-footed mouse (Peromyscus leucopus)https://en.wikipedia.org/wiki/White-footed_mouse |
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Why Did the Outbreak Occur in the Four Corners Area?なぜフォー・コーナーズ地域で発生したのかしかし何故この症例のクラスター(集団発生)が突然起きたのだろうか?この質問に対する鍵となる答えだが、この時期にはいつもよりずっと多くのマウスが突然発生していたと言うことである。フォー・コーナーズ地域は数年に亘り干ばつが続いていた。その後、1993年初めの大雪と降雨が、干ばつの手負いを受けていた動植物を生き返らせ通常以上の数を成長させるのを手助けしたのである。その地域の deer mouse は沢山の餌を得、結果として急激に増殖したが、1992年5月の10倍の数のマウスが1993年5月に棲息することとなった。沢山のマウスがいれば、マウスとヒトとが互いに接触することはより増大し得ただろう。斯くして、マウスが運ぶハンタウイルスがヒトにより多く伝染し得ただろう。 |
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Person-to-Person Spread of HPS Decided Unlikelyヒトからヒトへの拡散はあり得ないと断定された「ヒトからヒトへの(HPSの)拡散は他の既知のハンタウイルスのいずれにても記録されて来ていないものの、新たな病原体を扱っている故に我々は(この集団発生の間中)心配していた」、とCDCの医学調査官 Charles Vitek は語った。進行途上にあった集団発生を調査している研究者と臨床医達はこの病気に関心を抱いている唯一のグループでは無かった。最初に数名のHPS患者が死亡し、新たな疾病がその地域の住民に影響を及ぼし、それがどうやって伝染するのか誰も知らないことが明らかになったあとすぐに、ニュースメディアは集団発生に関して広範囲な報道を開始した。それに続き大衆の間での関心が拡大した。不幸なことに、発生の最初の犠牲者はナバホ族だった。ニュース報道はこの事実に焦点を当て、未知の病気がナバホ族にどういう訳か関わっているとの誤った認識が拡大した。結果として、ナバホ族は自分たちがメディアの強い関心の中心に居て、自分たちを恐怖の対象とする人達も居ると知った。1993年の晩夏までに、メディアの熱狂は幾らか静まり、病気の原因が正確に示された。研究者達は、他のハンタウイルス同様、HPSを惹き起こすウイルスは他の感染症、例えば一般的な感冒が起こすヒトからヒトへの遣り方では伝搬しないと結論した。これに対する例外は、1996年のアルゼンチンでのHPSの発生である。この発生から得られた証拠は、南米のハンタウイルスの系統がヒトからヒトへと伝染する可能性を示唆している。現在に至るまで、米国に於いてはこのウイルスが一人からもう一人へと伝染するとの事例報告は無い。実際、患者或いは関連するタイプのハンタウイルス(ヒトで別の疾患を起こす)の試料に晒された医療従事者を調査したところ、彼らが感染若しくは発症した証拠は全く示されていない。チリとアルゼンチンでは、ヒトからヒトへの伝染が、アンデスウイルスと呼ばれるハンタウイルスのタイプの発症者と濃厚に接触した者の間で稀に起きている。 |
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HPS Since the First Outbreak最初の発生以降のHPS最初の発生の後、全国レベルでの医学界が、他の原因で説明出来ないHPS類似の症状を示す疾病についてどんな事例であれ報告する様要請された。結果として、症例報告が追加された。1993年以降、研究者達はHPSを惹き起こすのは只1つのハンタウイルスではなく幾つかあることを発見して来ている。1993年6月にフォー・コーナーズへの旅行経験を持たないルイジアナの橋梁検査官がHPSを発症し調査が開始された。患者の組織がハンタウイルス抗体を持つかテストされた。結果としてBayouvirusと命名される別の種類のハンタウイルスの発見へと繋がったが、これはrice rat (Oryzomys palustris)がキャリアーである。1993年の暮れ、33歳のフロリダ男性がHPS症候群に罹患したがのちに回復した。この人物もフォー・コーナーズ地域には旅行したことがなかった。同様の調査の結果、Creek Canal virus と命名される更に別のハンタウイルスと判明したが、そのキャリアーは cotton rat (Sigmodon hispidus).である。ニューヨークでも別の事例が見られたがこれはNew York-1と命名される Sin Nombre 類似のウイルスで、 white-footed mouse (Peromyscus leucopus) がキャリアーとして関係するとされている。つい最近、各種ハンタウイルス由来のHPS症例がアルゼンチン、ブラジル、カナダ、チリ、パラグアイ及びウルグアイにて記録されており、HPSは地球半分規模の汎疾病となった。(終わり) |
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HPS の発生を見た後、他のネズミを調べたら別の種類のハンタウイルスが続々と発見された訳ですが、いずれも重篤なハンタウイルス肺症候群を起こし、死亡率も大変高い(40%)感染症です。Disney のキャラクターはさておき、これでネズミ恐怖症 muriphobiaの米国人が増えたのかもしれません。個々のウイルスの型並びにキャリアーとなる動物については、下記サイトをご参照下さい。簡略に纏められています: バイオテロ対応ホームページ 厚生労働省研究班https://h-crisis.niph.go.jp/bt/other/28detail/ 次回はハンタウイルス肺症候群の臨床像、防御について概観します。 |
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