カピバラD ウマのロコモーションとの比較 |
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2020年11月1日 (2024年10月9日追記) 皆様、KVC Tokyo 院長 藤野 健です。 前回に引き続き、「巨大ネズミ」 カピバラに関するトピックスを採り上げます。今回からは院長の専門分野であるロコモーションの話としましょうか。 本コラム作成の為の参考サイト:https://en.wikipedia.org/wiki/Caviidaehttps://ja.wikipedia.org/wiki/テンジクネズミ科https://ja.wikipedia.org/wiki/カピバラhttps://en.wikipedia.org/wiki/Capybarahttps://en.wikipedia.org/wiki/Hydrochoerushttps://en.wikipedia.org/wiki/Lesser_capybarahttps://ja.wikipedia.org/wiki/ジャガーhttps://en.wikipedia.org/wiki/Jaguarhttps://en.wikipedia.org/wiki/American_Drum_Horse障害馬術馬主協会https://ehoa.org/ヨーロッパでは牧場を個人で抱え、愛馬と共に障害競技に出たりポロで楽しんだりするのは、(元)貴族階級以上に限定されます。競馬も上流の娯楽で有り、一方一般大衆はサッカーに夢中になります。本邦ではウマと言うと戦争兵器としての軍馬或いは賭け事の道具としての競馬馬の扱いの比重が強く、生き物としてのウマとヒトとの関係が狭い範囲に限定されており、院長は残念に思います。まぁ、或る意味、暗く、貧しいですね。襲歩 日本中央競馬会https://www.jra.go.jp/kouza/yougo/w34.html |
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カピバラのロコモーション平地走法 −ウマとの比較− 水陸両棲動物であるカピバラは地表ではどの様なロコモーション(移動に際しての運動特性)を示すのでしょうか? − 骨格像からも判断できますが、ウサギほどではありませんが前肢に比べて後肢が長くまた強大で、更に後肢はつま先で接地するだけですので、踵(かかと)までの長さが後肢長に加味され、四足姿勢時には:結構な腰高の姿勢になります。 この様なプロポーションの為、ゆっくりと平地を歩行する場合には、幾らかよたよたした歩容になりますが、基本イヌの歩行などと大差は見られません。一方、走行時には後肢2本を揃え、体幹を背腹方向に屈伸させて跳躍する要素を加え前方推進力を得る方式に切り替わります。ウマの全力疾走時にもこの様な後肢を揃えて走る歩容である gallop ギャロップが採られますが、それにウサギの跳躍を幾らか足した様な走法ですね。 <究極の>cursorial animal 地表疾走性動物であるウマの疾走時のギャロップ走法では、体幹の背腹方向の屈伸は目立たず、体幹はほぼ水平に保たれます。鞍に腰掛けての上下動はせいぜい15cm程度でしょうか。これ故、人間が騎乗出来る訳ですが、ウマとしては上下動方向の無駄なエネルギーを使わず、重力とは90度方向の水平方向への移動効率を最優先するロコモーションとして完成させたのでしょう。それゆえ時速60kmで安定して長時間疾走が出来る訳です。馬を調教し、側対歩(そくたいほ)で走行させると更に鞍の上下動は小さくなり、人に取っての安定性が増大します。その分、速度は出せなくなりますね。一方、ズングリした姿形のカピバラの上記の様な走法では、長時間の疾走は苦しく、ジャガーやハンターから逃げ去る時の短時間の走法に限定されるだろうと想像出来ます。尤も、ジャガー自身が全速力疾走を可能とするのは極く短時間に限定され、ジワジワ型の策略に立脚するヒト祖先系の執ったであろう持久走型ハンティングとは形態が大きく異なります。 |
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因みにウマの歩容パターンですが、速度が低速から高速に移行するに連れて、walk (なみあし)< trot (はやあし、速歩または斜対歩)< canter (かけあし)< gallop(襲歩 しゅうほ)へと切り替わるのですが、各速度に於けるウマとしての<巡航>走法、詰まりは無駄なエネルギー消費を抑え、最大効率的で疲れの少ない走法に切り替えると考えて良かろうと思います。多段のギアシフトですね。側対歩(side to side walk,或いは馬術用語で pace と言う)とは本来的に調教により、小型馬種に於いては或る程度の速度が出せる歩容になります。乗り手の人間側には負担は少なくとも、馬には幾らかは辛い走法となりそうにも見えます。左右各々同側の前後肢を同時に送りますので、ヒトで言うところのナンバ歩行にも類似します。乗り手に負担少なく、長距離を移動しての騎馬戦術には優れていそうですね。カピバラの場合は、ここまでの違いは無く、walk なみあしと gallop しゅうほ、の2パターン程度と見なせそうです。他の多くの哺乳類の地表ロコモーションも大まかな括りとして2パターンから構成されると見なしても大きな間違いでは無いと院長は考えて居ます。ヒトの二足歩行についても通常の歩行と駆け足の2通りがメインで有り、持って生まれた本質としては一本通してジョギングしたりマラソンする習性はない−後付けとしての運動性である−様に院長は考えて居るのですが如何でしょうか?他に、子供がおそらく学習した歩容として行う、スキップ(片足を2歩連続し左右交互に行う)やウマのgallop に類似した歩容も観察されます。また、霊長類の一部のものに前肢2本でぶら下がりながら前進する腕渡りbrachiation ブラキエーションと言うロコモーションが観察されるのですが、<低速腕渡り>と<高速腕渡り>時で何かこの様なロコモーションの切り替わりが発生するのか、或いは1つの種に於いては腕渡りの速度の差と呼べるものが存在しているのか否か、興味深いです。 カピバラの後肢が何故強大化し長くなったのかについてですが、皆さんお考えの通りで、1つには水中での推進力を得る装置としての目的があったからだろうと想像します。 |
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次回から数回に亘り、水陸両棲動物であるカピバラのもう1つの方の重要なロコモーション、即ち泳法について比較・検討して行こうと思います。 |
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