ロコモーションの話 ー 体幹の屈伸方向の違い |
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2020年12月5日 皆様、KVC Tokyo 院長 藤野 健です。 カピバラと他の水棲齧歯類との運動特性の比較をこれまで行ってきましたが、最終的にビーバーの尻尾の扁平化の持つ機能的意義について考察する前に、途中追加的にロコモーション関連の話をまた〜りと採り上げます。その第2回目です。 本コラム作成の為の参考サイト:https://ja.wikipedia.org/wiki/魚竜https://en.wikipedia.org/wiki/Ichthyosaurhttps://ja.wikipedia.org/wiki/イルカhttps://en.wikipedia.org/wiki/Dolphinhttps://ja.wikipedia.org/wiki/ローリング |
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体幹の屈伸方向の違い 時々間違ってクジラの尻尾の向きを魚と同じ様に縦方向に描く子供さんが見受けられますが、実際にはクジラの尻尾は水平方向に配置しています。勿論、イルカの尻尾の向きもクジラと同じく水平です。体幹(頭+胴体の一体構造)を背腹方向に往復(屈伸)させ、その動きを尾びれに伝えて前方推進力を産生します。船頭が艪を漕ぐ動作と基本的に変わりません。 哺乳類の往復運動の屈伸は背腹方向にあり、蝶番(ちょうつがい)の回転の軸は身体の左右を貫く軸になります。 これに対し、爬虫類以下は基本的に往復運動の回転軸が身体の背中と腹を貫く向きに配置しています。エイなどを除く一般的な魚に関しては、その尾びれは縦方向に配置しており、また魚竜−これは一度陸に上がった爬虫類が再び高度に水中適応した生き物−の尾びれもそれと同じです。尾びれを左右に振って推進力を得る機構です。 まぁ、推進力を得る往復運動の蝶番の回転軸が哺乳類では身体の左右を貫く軸、一方爬虫類以下では身体の背腹を貫く軸であり、方向が直交する事になります。爬虫類と哺乳類とで体幹の動作が根本的に異なっていることは、昔から良く認識されていた事象であり、この場で院長が強調するまでもないことです。只、それを蝶番の軸性の向きの違いとして改めて強調したのは院長かもしれません。 因みに、トリでは頸椎より下の椎骨である胸椎と腰椎は、体幹を飛行船の胴体の様に一体化すべく互いに癒着して動きが封じられています。これは飛翔への適応でしょう。体幹がぶよぶよしていては、翼を往復させる胸筋のアンカーとしての土台が安定せず飛翔には不利になるでしょう。ラグビーボールの様な一体化した胴体に左右の翼を配し、情報センターとしての頭部を前方に付きだし、華奢に作った地上歩行用の脚を付属させる構成です。頸椎はハトやニワトリの首の動きから分かる様に背腹方向に屈伸可能です。短い尾椎の動きも同様です。 |
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尚、空間中に於ける物体の回転運動は、原点で交わる適当な3方向の軸のベクトルの合成で瞬間瞬間の回転軸を表すことが可能です。通常は、前方に向かう軸、体幹の左右を貫く軸、上下を貫く軸(鉛直軸)の3軸で、例えば剛体(ひとかたまり)と見做した航空機の運動(各ローリング、ピッチング、ヨーイングと呼ぶ回転動作)がこの3軸の合成で表現出来ます。動物の場合は胴体自体が多関節構造の椎骨から構成され、内部で分割的な運動が起き、それの総体プラス四肢の動きとして、外部に対するロコモーションの漕ぎ出しの出力動作となります。飛行機の操縦と違って理解するのは容易ではありません。しかしながら大まかに言えば。哺乳類の胴体は左右軸回りの反復回転、即ちピッチング動作を起こす造りに、一方、爬虫類以下では鉛直軸回りの運動、即ちヨーイングを基本とする運動になっていると理解出来ます。 |
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