ロコモーションの話 ー 魚類のロコモーション |
||
2020年12月10日 皆様、KVC Tokyo 院長 藤野 健です。 カピバラと他の水棲齧歯類との運動特性の比較をこれまで行ってきました。最終的にビーバーの尻尾の扁平化の持つ機能的意義について考察しようと思いますが、その前に途中追加的にロコモーション関連の話をまた〜りと採り上げます。その第3回目です。運動性に関することですので、youtube からの動画資料を多くお借りしての解説です。その分、文章量は少なくなります!がご了解ください。 本コラム作成の為の参考サイト:https://en.wikipedia.org/wiki/Walking_fishhttps://en.wikipedia.org/wiki/Handfishhttps://ja.wikipedia.org/wiki/ムツゴロウhttps://ja.wikipedia.org/wiki/シーラカンスhttps://en.wikipedia.org/wiki/Coelacanth |
||
なぜ屈伸方向が違うのか? 前回に、哺乳類とそれ以前の段階の動物との間で、軸の方向性の違いが生じている事に触れましたが、ではなぜこの様な違いが起きたのかについて解説しましょう。 爬虫類では地面に腹を接地し、体幹を左右にくねらせながら体幹の横に突き出した四肢を地面に引っかけて漕ぎ進める様に前進する方式、言わば匍匐前進型のロコモーションを色濃く遺しています。これは、実は水中からなだらかな浜辺へと陸上に進出した両生類のなごりとも言えます。水中生活では浮力が生じますので、四肢(四肢もどきとしての鰭)は舵取りや歩行には利用しますが、重力に対して体幹を浮かせて支える力が基本的に足りません。カエルウオやハゼなどの仲間に<水中歩行>するものが居て確かに海底の上をとことこ歩行するのですが、これも浮力に大いに助けられての歩行ですね。 |
||
因みにシーラカンス(ラチメリア)は生きている化石と言われ、院長が子供の頃にも読売新聞社が主体となってシーラカンスの標本を本邦に持ち込み、センセーショナルに報じられました。シーラカンスは、魚と陸上脊椎動物を繋ぐ生き物としてよく知られている生き物です。現在に至るまで生体記録がなされ、また標本としても捕獲されています。生体の動画像を見る限りでは、一部の鰭の基部への筋肉の付着量が大きく、強力な漕ぎ出し或いは方向転換が可能に見えます。但し、全体的な泳法を見ると、それらの鰭が地上脊椎動物の四肢としての萌芽状態の機能形態を持つ様には全く見えません。 今から30年程前には、当時東大農学部水産学科の名誉教授であり非常に高名だった末広恭雄先生がシーラカンスの解剖を行っています。ちょっと言わせて戴ければ、これは矢張り陸上動物の四肢の進化を本分とする形態学者のチームの参加を得て解剖させるべきでは無かったのかと感じています。まぁ、魚類学と獣医学との線引き、縄張りを巡る熾烈な(実際は水面下の穏やかな)競争、対立も背景にはありそうです。因みに私の居た獣医学科は農学部本館3号館の2F、水産学科はその上の3Fを占めていました。端からの院長の無責任な意見となりますが、そもそもシーラカンスとはそれほど騒ぎだてすべき生き物なのか、との感触を抱いています。学問的事大主義が介入しているのではないかとの疑義です。変化しないままに3億年生きている姿は確かに驚嘆ものなのですが。 |
||
斯くして、<進歩派で冒険好き>の魚類が浜の上に進出した時には、腹を地面に付けて、体幹の横に突き出した四肢を利用して、体幹を時々地面から浮かせながら、よっこらしょと漕ぎ進めるロコモーションを採らざるを得ませんでした。これは魚時代の体幹の左右屈伸方法をそのまま地上歩行に利用した形になります。このロコモーションの欠点としては、砂泥地の上を歩行するムツゴロウを見れば分かりますが、腹這い歩行ゆえに基本的に平らな表面を持つ媒体上を進むことしか出来ません。基本、凸凹の土地には進出、利用が出来ないことになります。それには体幹の腹面を地表から浮かすロコモーションの導入が必要になる訳ですね。 次回は両棲類の解説に入ります。 |
||