ロコモーションの話 ー 両棲類のロコモーション |
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2020年12月15日 皆様、KVC Tokyo 院長 藤野 健です。 カピバラと他の水棲齧歯類との運動特性の比較をこれまで行ってきました。最終的にビーバーの尻尾の扁平化の持つ機能的意義について考察しようと思いますが、その前に途中追加的にロコモーション関連の話をまた〜りと採り上げます。その第4回目です。運動性に関することですので、youtube からの動画資料を多くお借りしての解説です。両棲類について扱います。 本コラム作成の為の参考サイト:https://ja.wikipedia.org/wiki/両生類https://en.wikipedia.org/wiki/Amphibianhttps://ja.wikipedia.org/wiki/オオサンショウウオhttps://en.wikipedia.org/wiki/Japanese_giant_salamanderhttps://ja.wikipedia.org/wiki/アシナシイモリhttps://en.wikipedia.org/wiki/Gymnophionahttps://ja.wikipedia.org/wiki/メキシコサンショウウオhttps://en.wikipedia.org/wiki/Axolotlhttps://ja.wikipedia.org/wiki/カエルhttps://en.wikipedia.org/wiki/Froghttps://ja.wikipedia.org/wiki/ウシガエルhttps://en.wikipedia.org/wiki/American_bullfroghttps://ja.wikipedia.org/wiki/ゴライアスガエルhttps://en.wikipedia.org/wiki/Goliath_frog日本小児内分泌学会 思春期早発症http://jspe.umin.jp/public/sishunnki.html |
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両棲類のロコモーション 過去には、エリオプスなるカエルの出来損ない?の様な馬鹿デカい!両棲類も地球上に棲息していましたが、現生の両生類はオオサンショウウオを除いては皆小型となり、イモリ、アシナシイモリ(共に水中生活性が高い)、それとカエル、の3つから構成される生物群です。幼生(カエルではオタマジャクシ)の時には尻尾を左右に振って前方推進力を得ますが、イモリとアシナシイモリでは成体となってもそのまま体幹を左右にくねらせて進みます。オオサンショウウオの尻尾を見ると縦方向に扁平化しているのが明瞭ですが、左右に振って推進力を得ると同時に方向舵としても利用出来る筈です。四肢も媒体に引っかけて前方推進力を得ます。尚、オオサンショウウオは上野動物園の水族館(不忍池の北側)の水槽内に観察出来ます。 因みにペット店で販売されているアホロートルはメキシコサンショウウオ Ambystoma mexicanum の幼型成熟(ネオトニー)タイプとして有名です。別名は Mexican walking fish メキシコの歩く魚、です。要するに、幼生が成体に変態することなくそのまま性成熟して子孫を遺すことが出来ます。鰓呼吸のままですので一生水中生活を続けます。空気呼吸はしません。冷水中に住み、代謝は低く、言わばとろ火でゆっくりとお湯を沸かすような成長ぶりですが、これに実験的に甲状腺ホルモンのサイロキシン(チロキシン)を投与すると成体のサンショウウオに一気に変態します。或る意味、甲状腺機能低下症気味のサンショウウオですが、性腺(のみ?)がまともに成熟するのが不思議です。アホロートルは性腺の発達を司るホルモン系の生物時計の進み具合が身体を発達させる甲状腺<系列>より早く進むとのアンバランスが顕著化した生き物と言えるのかも知れませんね。ヒトでは思春期早発症が知られ、身体が子供の時代に性毛の発生を見たり乳房が肥大化するなどして親が慌てて大学病院に駆け込むに至りますが、性腺を司る臓器の腫瘍に起因する事例がそこそこあります。 アシナシイモリは、ウナギにも非常によく似ています。ヘビと同様に、四肢が邪魔となる場所、詰まりは地中や泥中、狭い隙間に活路を見出して進化した動物と考えれば宜しいと思います。四肢の小さくなった個体の生存率が高まり、四肢の退化傾向が強化され、遂には消失した、との進化シナリオを描けば間違いでは無いと思います。ここら辺を遺伝子発現の機構を元に解明すればノーベル賞一歩手前ぐらいの業績になりそうに院長は思っています。まぁ、医学生物学の研究にネズミばかりを使うのは止めて!両棲類にシフトすべきとも考えます。 |
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カエルのロコモーション ご存じの様にカエルは左右対照性に運動し、後肢利用の跳躍で地表を進みます。尤も、ガマガエルは地表を跳躍せずに四肢を左右交互に用いてのそりのそりと歩行します。カエルの頭部+体幹は脊椎骨の数も大幅に減少するなどして一体化構造していますので、ガマガエルが歩行しても体幹の左右へのくねりは殆ど発生しません。この様な一体化は、飛翔するトリの体幹部が一体化して飛行船の本体の様な形状を呈するのと同様、跳躍への適応であり、後肢が産生したパワーを無駄なく前方推進へと利用する為の適応でしょうね。まぁ、ロコモーション的に特殊化を遂げた両棲類と言えるでしょう。上にも述べましたが、幼生のオタマジャクシが尻尾を左右に振って泳ぎますが、これが子ガエルに変態する際には大きくロコモーション様式が切り替わる訳です。身体の筋骨格系が大きく変化して左右対照性の跳躍運動に切り替わる過程で、筋肉の運動を制御する脳(小脳に相当する部分)の制御システムも大きく変化する訳ですが、このシステム変化がどのように切り替わるのかを研究したら大変面白ろそうです。それ以外にも幼若時には手足を再生する能力も持ちますので研究対象としてはあれこれ使えそうな生き物に見えます。上にも述べましたが両棲類の研究が大きな成果を生む用には感じます。 20年近く前に研究の為に自宅で一時期ウシガエルを飼育していたことがありました(研究目的等の特別な許可を得ている場合を除き、現在は法律で飼育が禁止されています)。その時はプラスチック製の巨大な漬け物樽を風呂場に置き、中に数頭のウシガエルを放ち、木の蓋で押さえていたのですが、鳴き声に加え、ジャンプして頭を木の蓋にぶつけるボコボコ言う音には困りました。一般人が飼育できるサイズではありません。これから想像すると、世界最大種のゴライアスカエルの飼育はただ事では無さそうで、専用のプール付きの頑丈に設計された温室を構える必要がありそうです。因みに、カメもカエルもそうなのですが、院長は餌食い拒否の個体に対する、餌を食わせて呑み込ませるノウハウは持っており、この点は子供の時から各種生き物飼育に明け暮れてきた自分の十八番ですね。餌食い拒否でお困りの方は早めにご相談ください。まぁ、哺乳類相手オンリーの獣医師にはこれは難しいかもしれません。 |
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