ロコモーションの話 ー トカゲの地上ロコモーション |
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2020年12月25日 皆様、KVC Tokyo 院長 藤野 健です。 カピバラと他の水棲齧歯類との運動特性の比較をこれまで行ってきました。最終的にビーバーの尻尾の扁平化の持つ機能的意義について考察しようと思いますが、その前に途中追加的にロコモーション関連の話をまた〜りと採り上げます。その第6回目です。運動性に関することですので、youtube からの動画資料を多くお借りしての解説です。<動>物ゆえ、動物を本質的に理解する為には文章や静止画のみでは矢張り限界がありますね。 爬虫類についてのお話の2回目です。 以下本コラム作成の為の参考サイト:https://ja.wikipedia.org/wiki/爬虫類https://en.wikipedia.org/wiki/Reptilehttps://ja.wikipedia.org/wiki/有鱗目_(爬虫類)https://en.wikipedia.org/wiki/Squamatahttps://ja.wikipedia.org/wiki/コモドオオトカゲhttps://en.wikipedia.org/wiki/Komodo_dragonhttps://ja.wikipedia.org/wiki/ミズオオトカゲhttps://en.wikipedia.org/wiki/Asian_water_monitorhttps://ja.wikipedia.org/wiki/ヤモリ科https://en.wikipedia.org/wiki/Gekkonidaehttps://ja.wikipedia.org/wiki/アオジタトカゲ属https://en.wikipedia.org/wiki/Blue-tongued_skink |
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トカゲの地上ロコモーション 現生の爬虫類は、有鱗目(トカゲ、ヘビ、ミミズトカゲ)、カメ目、ムカシトカゲ目、ワニ目の4つの仲間から構成されていますが、順にロコモーションを紹介して行きましょう。 さて、有鱗目のトカゲは、ヤモリ、イグアナ、スキンク(カナヘビ、アオジタトカゲなど)、それとオオトカゲ(ミズオオトカゲ、コモドドラゴンなど)の大きく分けて4つの仲間から成ります。基本的に、いずれも爬虫類の名にふさわしく、胴体を地面からあまり浮かせずに、体幹の側方に突き出した四肢を、体幹の左右へのくねり動作と共に前方に降り出し、手足の爪などで媒体を引っかけ前進する方法のロコモーションスタイルになります。これはヒトが地面上を匍匐前進する時或いはロッククライミングする時(これは垂直方向への一種の匍匐前進動作と言って良いでしょう)にも見られることなのですが、手足をより前方に到達させるために体幹を左右にくねらせてストライド長を稼ぐ動作と言えるでしょう。身体全体としては、媒体表面に対して身体を平坦化し、言わば二次元平面に接近したロコモーションです。 |
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ヒトの匍匐前進との比較 因みにヒトは胸郭が扁平化し、肩甲骨がその背側に乗る形になりますが、肩関節窩が側方を向いて上腕骨が体幹の側方に突き出すのが本来的な動作になります。この状態で腹這いになり、肘を90度曲げればコモドドラゴンの前肢の配置に類似します。胸郭が扁平化したのは腕渡り(ブラキエーション)への適応形態と考えて良いと思いますが、他の一般的な哺乳類が苦手な匍匐前進が割かし楽に遂行できることになります。実はヒトの赤ん坊が這いつくばいから這い這いの第一歩を始めるのもその様な身体の造りがそれを許容するからです。一般的な哺乳類では這い這いなどせずに、いきなりよろよろと四肢を体幹の下に立てて立ち上がり歩行を開始します。 ヒトが腹這いが可能だとしても、肩甲骨は自由度が大きく胸郭の上を動いてしまいますので、周囲の筋肉が肩甲骨の位置を保ちつつ動作させることになります。また肩関節窩が側方を向いているところに上腕骨頭が関節することから本来的に体重を支えるには苦しい姿勢です。脱臼を防止する為にはこれまた肩関節周囲の筋肉を動員して関節を固める必要があります。この様な按配で、筋を収縮させる為のエネルギー消費が大きく、ヒトの匍匐前進はすぐに疲れてしまいますね。一方、トカゲでは肩甲骨のワンセット(肩帯)は胸骨をベースとしてしっかりと胸郭に連結しており、また肩関節はヒトの様にボールが狭いお皿に乗る構造ではなく、前後の往復運動に限定された構造になります。この様に、骨の構造が体重の一部を負担してくれることになり、肩甲骨や上腕骨の自由度は格段に落ちますが、前肢操作にあずかる筋のエネルギー消費は上腕骨の前後への往復運動に大きく振り向けることが可能になり、這いつくばり前進に適応的だと言えます。このトカゲの骨の造りに関しては後のコラムで他の動物との比較で解説する予定です。 |
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