ロコモーションの話 ー 各種ヘビ型動物 |
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2021年1月15日 KVC Tokyo 院長 藤野 健です。 カピバラと他の水棲齧歯類との運動特性の比較をこれまで行ってきました。最終的にビーバーの尻尾の扁平化の持つ機能的意義について考察しようと思いますが、その前に途中追加的にロコモーション関連の話をまた〜りと採り上げます。その第10回目です。運動性に関することですので、youtube からの動画資料を多くお借りしての解説です。 爬虫類についてのお話の6回目です。 本コラム作成の為の参考サイト:https://ja.wikipedia.org/wiki/爬虫類https://en.wikipedia.org/wiki/Reptilehttps://ja.wikipedia.org/wiki/有鱗目_(爬虫類)https://en.wikipedia.org/wiki/Squamataヘビ亜目https://ja.wikipedia.org/wiki/ヘビhttps://en.wikipedia.org/wiki/Snakehttps://ja.wikipedia.org/wiki/ウミヘビ科https://en.wikipedia.org/wiki/Sea_snakehttps://ja.wikipedia.org/wiki/ウラブウミヘビhttps://en.wikipedia.org/wiki/Black-banded_sea_kraitトカゲ亜目https://ja.wikipedia.org/wiki/バルカンヘビガタトカゲhttps://en.wikipedia.org/wiki/Sheltopusikミミズトカゲ亜目https://ja.wikipedia.org/wiki/ミミズトカゲhttps://en.wikipedia.org/wiki/Amphisbaenia |
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さて、爬虫類のヘビはどうしてヘビになったのかですが、ヘビ型の両棲類であるアシナシイモリがそのまま爬虫類に進化したのではなく、手足の備わった爬虫類としてまず進化し、そこから何らかの理由で手足を失ったと考えるのが正しいです。これは例えば、イルカが魚竜からそのまま進化したのでは無いことに同じで、進化レベルの違う系統の内部に、それぞれ似た様な動物が発生する現象です(収斂 しゅうれん現象と言います)。同じ様な環境に適応すると系統が離れていても同じ様な姿・形に進化する訳ですが、1つの祖先系が様々な環境に適応して拡大(適応放散)し、その結果として収斂を示す場合がある訳です。 ではどうやって手足を退化させて胴体を細長くする様に進化したのか、ですが、ヘビの仲間(ヘビ亜目)とは少し系統的に離れるトカゲの仲間(トカゲ亜目)の内にアシナシトカゲ科があり、そこには四肢の揃ったものもいれば、四肢を失い痕跡的な後肢を遺すものも存在します。まぁ、手足が退化消失し同時に体幹が長く伸びた推移の経過が温存されていることになります。但し、体幹部の柔軟性はヘビほどには持たず、<身体が硬い>と言われています。トカゲの仲間ですので、ヘビとは異なり瞼や耳孔があり尾を自切可能です。南ヨーロッパから中央アジアに掛けて最大種(全長135cm に達する)バルカンヘビガタトカゲが棲息し現地の人々には知られていますが日本人には全く馴染みは無い生き物でしょう。顔がトカゲで胴体がヘビゆえちょっと違和感のある生き物に感じます。ペットとしても飼育されますが寿命は50年とも言われて、カラダを含めて長〜いお付き合いになります。覚悟の程を! |
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他方、有隣目の中にはミミズトカゲと言う更に変わったヘビ様の生き物(ミミズトカゲ亜目)が存在します。昔はトカゲの仲間に分類されていましたが、現在ではトカゲからは独立させています。これは地中性を強めている仲間ですが、確かにミミズに似た外見です。前肢2本のみを遺し後肢を退化させた(痕跡的な腰の骨は遺っています)種類もいれば四肢全てを失ったものもあります。二本足のヘビ(もどき)ゆえ素人を驚かすには十分な存在です。 まぁ、四肢の退化傾向のある生き物として、有隣目の中には、トカゲの仲間のアシナシトカゲ、ミミズトカゲの仲間のミミズトカゲ、それとヘビの仲間のヘビの3系統 (ヘビ三兄弟?)がヘビ型動物として存在する事になります。おそらく、有隣目の身体を左右にくねらせる運動性が四肢の退化傾向を生み出し易いところがあるのでしょうね。換言すれば、有隣目自体がロコモーションの主体は体幹にあって、四肢は形態的並びに機能的発達弱く、これを退化し易い傾向を持った生き物だ、とも言えそうです。 現生の他の爬虫類の仲間である、カメ、ワニ、ムカシトカゲにはヘビ化した動物は存在しません。特にカメは体幹運動性を完全に失い、四肢を利用しての歩行や泳法のみですので、今更ヘビ化しようが有りませんね。ワニの方は四肢がやや哺乳類に接近し体幹を地上から離してすたすた歩行するなど、系統的にも恐竜に近い仲間であり、ロコモーションに於ける四肢の重要性を高めている動物群と言えます。手足を主として利用してロコモーションを行う<味を占めた>動物となっては今更四肢を失う利点は無いでしょう。哺乳類も然りで、海棲輪乳類として四肢を退化させてきた動物は除き、地表で四肢を失いヘビ化するものはこの先もおそらく現れないだろうと思います。尤も、胴体を伸張させているテンやカワウソがひょっとして?ヘビ化しないとも限らず・・・。毛皮のままでは地面にペグとしてのエッジが立てられず滑って前進出来ませんので、オポッサムの尻尾に見られる様なウロコを再び全身に纏うことも必要に見えます。jこれに加え、背腹方向の運動性を持つ脊椎の構造を左右方向の振れに有利な構造に改造する必要もありますね。 ヘビの仲間は、アシナシトカゲやミミズトカゲの仲間以上に、四肢消失と体幹の伸張化、そしてそれを生かしたロコモーションの洗練、への特殊化が著しく進んだ有隣目の中の1つの仲間だと考えて間違いではないと思います。まぁ、言うなればヘビ型動物のプロ中のプロです。 |
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