ロコモーションの話 ー ヘビ型化の利点 |
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2021年1月20日 KVC Tokyo 院長 藤野 健です。 カピバラと他の水棲齧歯類との運動特性の比較をこれまで行ってきました。最終的にビーバーの尻尾の扁平化の持つ機能的意義について考察しようと思いますが、その前に途中追加的にロコモーション関連の話をまた〜りと採り上げます。その第11回目です。運動性に関することですので、youtube からの動画資料を多くお借りしての解説です。 爬虫類についてのお話の7回目です。 以下本コラム作成の為の参考サイト:https://ja.wikipedia.org/wiki/爬虫類https://en.wikipedia.org/wiki/Reptilehttps://ja.wikipedia.org/wiki/有鱗目_(爬虫類)https://en.wikipedia.org/wiki/Squamataヘビ亜目https://ja.wikipedia.org/wiki/ヘビhttps://en.wikipedia.org/wiki/Snakehttps://ja.wikipedia.org/wiki/ブラーミニメクラヘビhttps://en.wikipedia.org/wiki/Indotyphlops_braminus国立環境研究所 侵入動物データベースhttps://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/30110.htmlフラーミニメクラヘビは沖縄、長崎、鹿児島、静岡、伊豆諸島に既に定着しています。https://ja.wikipedia.org/wiki/アナコンダhttps://en.wikipedia.org/wiki/Eunecteshttps://ja.wikipedia.org/wiki/ボアコンストリクタhttps://en.wikipedia.org/wiki/Boa_constrictorhttps://ja.wikipedia.org/wiki/ニシキヘビ科https://en.wikipedia.org/wiki/Pythonidaehttps://ja.wikipedia.org/wiki/ウミヘビ科https://en.wikipedia.org/wiki/Sea_snakehttps://ja.wikipedia.org/wiki/ウラブウミヘビhttps://en.wikipedia.org/wiki/Black-banded_sea_kraitトカゲ亜目https://ja.wikipedia.org/wiki/バルカンヘビガタトカゲhttps://en.wikipedia.org/wiki/Sheltopusikミミズトカゲ亜目https://ja.wikipedia.org/wiki/ミミズトカゲhttps://en.wikipedia.org/wiki/Amphisbaeniahttps://ja.wikipedia.org/wiki/単為生殖https://en.wikipedia.org/wiki/Parthenogenesishttps://ja.wikipedia.org/wiki/ニューメキシコハシリトカゲhttps://en.wikipedia.org/wiki/New_Mexico_whiptail |
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ヘビがどうしてヘビになったのか、その理由を次に考えましょう。 身体が細長くなると岩や土中の隙間などの狭い空間に入ることが容易になり、また地表に於いても自分の頭が通る程度に隙間が空いていれば全身をつるりとくぐらせることが容易になります。ヘビの仲間(ヘビ亜目)にブラーミニメクラヘビと言う世界最小のヘビがいるのですが、サイズに加え姿もミミズにそっくりで地中生活性への特殊化を一段と進めているヘビと考えてよいでしょう。ヘビの祖先はここまでには地中生活性の進化淘汰圧を強く受けることは無く、<隙間産業的>にヘビ化したのだろうと院長は考えます。まぁ、ブラーミニメクラヘビは二次的に地中生活性を強化し、サイズも縮めたとの解釈です。 因みにこのヘビは雌個体のみが存在し、単為生殖をして子孫を遺すとの、高等脊椎動物にしては珍しい生殖法を採ります。1匹飼育していれば子孫を遺し増えて呉れる訳です。単為生殖は爬虫類では一部のトカゲ、ヘビに観察され、ニューメキシコハシリトカゲの仲間の15種が完全に単為生殖のみで継代することから詳しく研究されています。コモドドラゴンは偶発的に単為生殖で子孫を遺す時があります。七面鳥や鳩でも偶発的に単為生殖で子孫が産まれるケースが知られています。ブラーミニメクラヘビは本邦にも棲息しますので単為生殖研究の良いモデルになりそうです。尤も、既に研究が行われているかもしれません。それ以外にも院長は飼育してみたい気持は抱いています。但し、院長の専門の形態学にはサイズが小さすぎてちょっと扱いにくいですね。元々院長は細かなものを対象とする組織学(光学顕微鏡や電子顕微鏡)が苦手で、目に見える大きなものを対象とする肉眼解剖学、機能形態学の道を進んだ訳でもありますし・・・。 話を元に戻しましょう。 現生の大方のヘビがカエルや野ネズミを主食とすることから判りますが、音も立てずに忍び寄り(足が無いので足音が立たない!)獲物を捕獲するスタイルが取れ、これは生態学上の大きな利点をもたらしたでしょう。顎の骨を単純化して口を大きく開き自分の頭より大きい獲物を呑み込む事が出来ます。これが故に陰険で腹黒いおぞましい生き物との烙印を人間から押されることにもなりますが。尤も、この改造に従い、耳の機能が単純化し鼓膜も失い音が殆ど聞こえません。目には瞼が無く見開いたままですが透明な皮膚に覆われています。これならどこに潜るにしても目にゴミが入って困る!こともありません。この特有の目のあり方、目つき−目は口ほどにものを謂う−も人間を気味悪がらせる一因に違いなかろうと思います。 ブラーミニメクラヘビとは反対にアナコンダ(南米アマゾンに棲息する親水性のヘビの仲間)、ボア(南米大陸)、ニシキヘビ(旧世界)などはいずれも巨大化していて文字通りのウワバミですが、地表で潜るべき隙間や隠れ家を見つける事が困難になるのと引き替えに(二次的な)ボディサイズ大型化の何かしらのメリットがある筈です。まぁ、ここまで大きくなると事実上敵無し状態であり、即ち生態学上の一勝者の地位に到達したと言えるでしょう。因みに洪水にたびたび襲われるアマゾン域には、カピバラやヤブイヌの様に親水生物化した動物も散見されますね。ナマケモノに加えネコ科のジャガーも泳ぐぐらいで・・・。これならヘビの一匹や二匹、泳いでも驚きはしませんね。 |
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ヘビがヘビになったのは、地上での隙間生活への適応の結果との考え−これも誰でも思いつくレベルの話ですが−以外に、水中生活性への適応に由来するとの考え(ヘビの水中起源説)もありますが、現生のヘビ型動物であるアシナシトカゲやミミズトカゲが水中適応性を強めずにヘビ化を遂げて居ることからこれは誤りだろうと院長は思います。ヘビは肺呼吸を行いますので、水中の岩の隙間や砂泥中に潜って身を潜めたり餌を捕獲する事は困難となりますし、また水中を泳ぐのに円筒形の胴体をくねらせて進むのが特に有利とは考えられません。海洋に進出したウミヘビでは尻尾(総排出口、クロアカより後ろの部分)が縦方向に平たくなり、魚の尾びれと同様に左右に振ることで前方推進力を強化していますが、これは、断面が円筒形であるヘビの姿そのものが扁平化や鰭無しでは水中で泳ぐには十分に適応した姿では無い事、即ち地上で進化したヘビが飽くまで二次的に水中(海洋)に進出した事を自ずと物語る事でしょう。 因みにヒトがどの様にして立位を取り二足歩行する様になったのかについてですが、これに関しても水中起源説が提出されています。これを議論する学会も存在し、院長は参加の案内を貰ったことがありますが遠慮したままです。これは、学説の粗筋としては、水の浮力で筋力の弱い状態の後肢でも立ち易くそれで立位の習性を獲得するに至った、との説ですが、そもそも四足歩行性の哺乳類は水中で立位姿勢を取ろうとすることは全く無く立位の起源を言う事が不可能でしょう。浮力の効いたような状態では立位を取る方向の進化は進みませんし、浜に上がればすぐに四足歩行に戻らざるを得ません。そして水中で立位を取る動物は元々地上でも立位を取り得る動物になります。例えば地上で二足歩行性を示すケナガクモザルが池の中で腰まで水に浸かりながら二足歩行するシーンを院長は撮影しています。即ち以上から、水中生活性では無い別の場所で立位の二足歩行性(直立二足歩行性)が獲得され、その様な動物が二次的に水中で立位を取ると考える方が無理がありません。これに関してはヒトの二足歩行成立のコラムについて詳述する予定です。 まぁ、思いつきレベル、或いは希望的観測を背景に仮説を構築するとほころびが出るとの例でしょう。仮説の構築とは、自説に都合良いところのみをピックアップして牽強付会を図るのではなく、寧ろ自説にそぐわない事実こそを重んじ、自説の修整を図り理論の筋道を強化していくことだからです。 |
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