ロコモーションの話ヘビロコモーションのジグザグスケート進化仮説 |
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2021年2月5日 KVC Tokyo 院長 藤野 健です。 カピバラと他の水棲齧歯類との運動特性の比較をこれまで行ってきました。最終的にビーバーの尻尾の扁平化の持つ機能的意義について考察しようと思いますが、その前に途中追加的にロコモーション関連の話をまた〜りと採り上げます。その第14回目です。運動性に関することですので、youtube からの動画資料を多くお借りしての解説です。 爬虫類についてのお話の10回目です。 本コラム作成の為の参考サイトhttps://ja.wikipedia.org/wiki/ヘビhttps://en.wikipedia.org/wiki/Snake |
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ヘビはジグザグスケート式に進むのか ヘビが地表でS字を描きながら蛇行するだけで前方推進出来てしまうのが直感的に理解出来ない方々が多いのではと思い、より分かり易い例えで考え直そうとのコラムの回です。・・・前にも述べましたが、普通に四肢を使ってロコモーションする生き物を理解する方が遙かにラクと正直感じますね。 さて、院長は子供の頃からアイススケートが好きでそこそこには上達しています。残念ながら、スケートリンクは各地で閉鎖の憂き目に遭っていますが、近頃流行?の路上で遊べるスケートボードでは身体を左右交互に傾けてヘビの軌跡の様に蛇行して進むことが可能です。ボードの上に乗ったままで足は一歩も地面に着ける必要はありません。ボード上の身体を左右、左右とスウィングさせるだけで進みます。実は院長は経験がありますが、これと同様にスケート靴の刃を氷面に接したまま、身体の重心を順に左右に振らし、それと同時に足首に回転力を加えることを通じて氷上にS字を描きながら進むことで、前方推進力が実際産生出来てスイスイ進めてしまいます。実は左右への方向転換−これはスケート者が能動的に行う−の直前にはスケートの刃は斜め前方を向いていますが、この時に氷面に対して自ずと体重が強く掛かりその反動で前進(正確には斜め前方)する事になりますが、これはヘビの進み方に似ている様にも思います。カーブしようとする時に意識せずともスケートの刃を前方に滑らかに進めながらスケートの刃の直角方向への力が同時に掛かる訳ですね。因みにスケートでブレーキを掛けて停まる時は、進行方向に対してスケートの刃を一気に90度回転させ、やや横滑りして氷を削りながら最終的に刃を氷にしかと食い込ませます。この停止動作はスキーも同様ですが、平地をクロスカントリーで進む時もスキーの板をスケートの刃と同じ様に斜めに雪面に着地させ、エッジを効かせて前方推進力を得る仕組みです。ストックを用いて腕の力でも推進力を得てはいますが。スキーの場合ですが、同じ傾斜角度の斜面であれば、重力のみに拠る直滑降に比べると、S字蛇行では理論的には更に前方推進力を加味することが出来る訳ですが、S字蛇行分だけ滑走距離が伸び、またS字を描く際の、雪面とスキー板の間の余計な摩擦力発生で速度が減じられる効果も出てしまい、絶対的なA−B2地点間を滑り降りる速度は寧ろ低下するのかもしれませんね。 複数のスケーターが連なり、前方の者の軌跡を辿りながら進めば、複数人が体重を掛けた箇所の氷が次第に深く削れて立派なアンカーポイントになりそうに見えます。ここに、ヘビロコモーションのジグザグスケート風理解の完成との按配です。まぁ、ローラースケートで滑ると考えれば、前々回にご紹介したヘビ型ロボットに同じで、なぁんだとお感じの方々もおられるかもしれません・・・。 スケート方式になぞらえた解釈ですので、ヘビの腹面と媒体(地表など)との間の体幹長軸方向の摩擦力が限りなく小さいものであることが必要で、と同時に、ヘビが体幹長軸に直角な方向の摩擦力を(能動的にエッジを効かせて)大きくし得ることが前提になります。これは実際のヘビの身体を利用して計測すれば数値として表すことが出来るでしょう。 ヘビは、アンカーポイントにて能動的に体幹側面の鱗を強く立てて、更に摩擦係数を高める工夫をしている可能性もありそうですね。ヒトがアンカーポイントで更に能動的に蹴り出しを加える場合には、その直前で脚を縮めて体重心を下げておき、アンカーポイントで縮めた脚を伸ばして蹴り出すことになります。同様にヘビがアーチ状に体幹を浮かせるのは、アンカーポイントに集中して体重を掛ける意味も有りそうです。これで蹴り出しを強めてダッシュを掛ける作戦です。 以上から、ヘビのS字くねらせロコモーションは、進行方向に一致しない方向の体幹の振れが盛大に発生し、エネルギー効率的には芳しく無いものの、S字カーブを作るがゆえに初めて脚の無いヘビは前進出来る、ヘビはくねって当たり前だ、とも言えます。スケートで言えば、S字に進むが故にスケートは滑れる、と言う訳です。 |
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実際、スピードスケート種目でのパシュートでは、身体の左右の揺れが発生し、複数人が連なるシーンではヘビの動きによく似た運動になります。各メンバーがネジの溝を進む様な統一された動きを示します。これは均一に統制を取ることがチーム一丸としての前方推進力産生に有利に作用するからでしょう。最後はバラケて各人がゴールにまっしぐらですね。 言われてみればなぁんだ風?の解釈かもしれませんが、この様な観点を元に更にロボットの開発を進めると面白いかもしれません。 ヘビロコモーションのジグザグスケート進化仮説は理論化して完成に漕ぎ着けましたが、具体的内容は論文発表前なので本コラムでの開陳は控えたいと思います。ご了承下さい。まぁ、これまで述べて来たことをベースに他の問題も含め考察した仮説になります。つまり、サワリは公開していることになります。 |
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