Ken's Veterinary Clinic Tokyo

相談専門 動物クリニック

                               


























https://ja.wikipedia.org/wiki/ネズミ


https://en.wikipedia.org/wiki/Dipodidae







https://en.wikipedia.org/wiki/Caviidae

https://ja.wikipedia.org/wiki/テンジクネズミ科


https://ja.wikipedia.org/wiki/カピバラ

https://en.wikipedia.org/wiki/Capybara


https://en.wikipedia.org/wiki/Hydrochoerus

https://en.wikipedia.org/wiki/Lesser_capybara











 院長のコラム 2021年4月1日


 ロコモーションの話 ー カメのロコモーションD








ロコモーションの話 ー カメのロコモーションD




2021年4月1日

 KVC Tokyo 院長 藤野 健です。

 カピバラと他の水棲齧歯類との運動特性の比較をこれまで行ってきました。最終的にビーバーの尻尾の扁平化の持つ機能的意義について考察しようと思いますが、その前に途中追加的にロコモーション関連の話をまた〜りと採り上げます。その第25回目です。運動性に関することですので、youtube からの動画資料を多くお借りしての解説です。

 爬虫類についてのお話の21回目です。引き続き水棲カメのロコモーションについて扱います。



以下本コラム作成の為の参考サイト:


https://ja.wikipedia.org/wiki/カメ

https://en.wikipedia.org/wiki/Turtle


https://ja.wikipedia.org/wiki/スッポン上科

https://en.wikipedia.org/wiki/Trionychia


https://ja.wikipedia.org/wiki/スッポンモドキ

https://en.wikipedia.org/wiki/Pig-nosed_turtle


https://ja.wikipedia.org/wiki/スッポン

https://en.wikipedia.org/wiki/Chinese_softshell_turtle


https://en.wikipedia.org/wiki/Bat_flight




Forelimb kinematics during swimming in the pig-nosed turtle,

Carettochelys  insculpta, compared with other turtle taxa:

rowing versus flapping, convergence  versus intermediacy


他分類群のカメと比較したスッポンモドキの遊泳中の前肢運動学:

ボート漕ぎ式か羽ばたき式か、収斂現象か中間的性状か


Angela R. V. Rivera, Gabriel Rivera, Richard W. Blob

Journal of Experimental Biology 2013 216: 668-680;

doi: 10.1242/jeb.079715

https://jeb.biologists.org/content/216/4/668

https://jeb.biologists.org/content/jexbio/216/4/668.full.pdf

無料で全文が読めます。







すっぽんもどきってすっぽんじゃないの?絶滅危惧種?すっぽんもどきの可愛さ教えます

2020/06/03 エスプリ の飼育日記

https://youtu.be/J0fpInb6lKs


繁殖困難だが可愛くて皆が求めた結果、絶滅危惧種化した、との良く聞くパター

ンですね。今出回っている個体は規制前に輸入された老個体か国内繁殖個体か

でしょう。このカメは淡水性ですが海洋性のカメ同様手足がヒレ化しており、特に手

のサイズが大きくなっています。高度な水中適応性を窺わせます。しかし陸上を歩

行する時に後肢を左右交互に進めていますが、これはウミガメの幼体では見られる

ものの、その成体では頻度は低下しています。この点は爬虫類としてのロコモー

ションの基本特性をまだ一定程度遺しているものと考えられます。






 スッポンモドキ Pig-nosed turtle Carettochelys  insculpta




 本種はカメ目 スッポン上科 スッポンモドキ科 スッポンモドキ属に属する一属一種のカメとなります(口を噛みそうになりますね・・・)。スッポン上科は スッポンモドキ科と スッポン科から構成され、本種と他のスッポンは系統的に近い存在です。オセアニアからニューギニアに掛けての淡水域、汽水域に棲息し、最大で甲長80cmに達するとされています。産卵時を除いて地表に上がらず(詰まり雄個体は孵化した直後に砂浜を歩くのが最後の歩行になります)、ウミガメ同様に高度な水中生活性の動物です。スッポンは甲羅干しの為に岩に登ったり、或いは自発的に地表を散歩する事が有りますが、これに対してスッポンモドキは格段に水中生活性を強化している訳ですね。現地では水辺環境の破壊を受けたり、食用に捕獲され、また一頃はペット用にも乱獲され激減しています。嘗ては野生個体の卵を採取し、人工孵化させた幼体が日本にも輸入されていましたが、それが禁じられ価格は高騰しているとのことです。スッポン自体が養殖に成功していますので、スッポンモドキも工夫をすれば繁殖まで持って行けると思いますが、本種が大型化して巨大水槽が必要となる上に、産卵場所となる陸地を併設する必要もあり、水族館等が多大な手間暇を掛けた上で、使命感に基づき細々と繁殖維持する以外に無さそうです。現地で保護区を設けて自然に繁殖させるのが矢張り一番ですね。ウミガメなどと同様、元々個人が飼育すべき、飼育できる対象種ではありません。

 一般的な話になりますが、カメをペットとして飼育したいのであれば、必ず国内で飼育繁殖に成功していて(自然保護の為でもあり、また飼育が容易な面から)、性質が大人しく(咬傷を避ける為)、成長してもそこそこのサイズに留まる種類(大型化すると維持出来ない)、を飼育すべきです。それに加え、カメは長寿ですので自身が飼育困難となった時のことを想定し、他の者にカメをバトンタッチ出来る人間としてのコミュニケーション力も同時に必要になります。この様な事を考えると、経済的にも余裕のある20代〜60代+家族を交えたチームが面倒を見るのが望ましいでしょう。その内、亀カフェが登場し、カメを飼育しないで我慢している?愛好家が集う様になるかもしれません。






digimorph.org/library/pop.htm?/specimens/Carettochelys_insculpta/specimenlarge.jpg

http://digimorph.org/specimens/Carettochelys_insculpta/


近縁なスッポンの仲間と大きく異なり、背甲に退化傾向無く、他の一般的なカメと同様の

形態です。尚、肋骨が癒合して出来た背甲は中央部分であり、それを取り巻くヘリの部分

は皮膚にカルシウムが沈着した起源を持つ皮骨から成ります。




digimorph.org/specimens/Carettochelys_insculpta/figure.jpg

http://digimorph.org/specimens/Carettochelys_insculpta/


腹甲も後方の左右の切り込みがやや深いですが、全体としてがっしりした頑丈な造り

に見えます。頑丈な腹甲の板に対して肩帯、腰帯の骨がしっかりとアンカー出来そう

です。スッポンの仲間と異なり、足よりも手のサイズが大きいですが、これはスッポンモ

ドキの遊泳法に密接に関与しています。起源的には腹甲も皮骨です。実際には脊椎

骨は背甲に癒合して引き剥がす事は出来ませんが右図は画像処理して甲羅を除去

したのでしょう。非常に面白い試みと感心します。





https://jeb.biologists.org/content/jexbio/216/4/668/F2.large.jpg


Fig.2  from Forelimb kinematics during swimming in the pig-nosed turtle,

Carettochelys insculpta, compared with other turtle taxa: rowing versus

flapping, convergence versus intermediacy

Angela R. V. Rivera, Gabriel Rivera, Richard W. Blob

Journal of Experimental Biology 2013 216: 668-680;

doi: 10.1242/jeb.079715


A.フロリダスッポン、B.アカミミガメ、C.スッポンモドキ、D.アカウミガメ


左前肢を腹側から観察したところ。Aのスッポンでは小指が折れ曲がり薬指との間の水か

きが拡大していますが、手のヒレ化はまだ軽度に留まり、Bのアカミミガメの骨形態と比較

しても大きな差異は見られません。これに対して、スッポンに近縁とされるCのスッポンモド

キでは手の平のみならず上腕骨 humerus 周囲も含めヒレ化が進行しています。外見的に

は、Dのアカウミガメに類似しますが、アカウミガメでは手の指が相対的に伸張する一方、

前肢の近位側の骨である上腕骨と前腕骨(橈骨 radius + 尺骨 ulna)が短縮しています。

また、ウミガメではヒレが全体的に骨格要素で裏打ちされていますが、スッポンモドキでは

ヒレの付け根の半分は膜構造のみでひらひらと柔軟に動くことが判ります。




Wing underside. Attic bat, Charente-Maritime (France)

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/dc/Bat-wing_underside.jpg

c Salix / Wikimedia Commons / CC BY-SA 3.0


指骨の長さが翼の半分程度に留まる点で、スッポンモドキの<櫂>はコウモリの翼に

一見類似します。他には、中指−薬指−小指の間の皮膜(水かき)を拡大している点で

も類似します。スッポンモドキの水中遊泳もコウモリの空中飛翔も姿勢転換、方向転換

を巧みに行いながら羽ばたく点が似ています(ツバメ返しにも類似します)が、この構造

に何か関連性はあるのかもしれません。左前肢腹側から。短い棘の様な突起は拇指

です。しかしながら、空を飛ぶ哺乳類が良く誕生したもんだと改めて驚かれされます。

尚、飛翔型ロコモーションに関しては滑空型を含め後日特集する予定です。






 スッポンモドキの形態とロコモーション




 スッポンモドキの骨格を見てすぐに気が付く事ですが、背甲、腹甲ともに頑丈に出来ており、スッポンの様に、背甲の周囲の縁近くの肋骨が分離して櫛の歯の様に突き出る事が無く、また腹甲も後方部分は幾分左右のサイズを縮めて甲羅からの後肢の出口を拡大しているものの、基本的にスッポン以外の他のカメと変わらない構造を保っています。これなら、肩帯と腰帯の骨は腹甲側の頑丈な板の上にしっかりとアンカー出来るわけです。足よりも手の平が大きい事もスッポンとは対照的です。この様な造りであれば、前肢で強力なパドリングが出来そうです。

 実際の水中遊泳時の動画を見ると、前肢を左右対称的に羽ばたくように動かして前方推進力を得ると同時に、手のヒネり動作が容易であり、細かな迅速な方向転換も巧みなことが理解出来ます。また足の方も手ほどのサイズはありませんがヒレとして機能し、こちらも手の動作と相俟って細かな方向転換に寄与している様に見えます。ウミガメの前肢がヒレとして大型化すると同時に、特に前縁半分が硬くなり、一体となって動作するのに対し、スッポンモドキの方は、ヒレ全体が柔軟な布の様に動く様に見えます。スッポンモドキの前肢のヒレは外見的にはウミガメのヒレに類似するものの、中身の骨格の構成が、ウミガメでは指骨を伸張させ、更にヒレの中に指骨を伸ばしてヒレを裏打ちしているのに対し、スッポンモドキでは指骨長がヒレの半分程度に留まり、ヒレの付け根半分寄り部分の尾側には骨性要素が配置しません。それで遊泳中に布がたなびくようなひらひらした動きを見せることになります。これは空中を巧みに方向転換しながら飛翔するコウモリの翼の構造に一見類似します。筋肉の配置を実際に観察しないと正確な事は言えませんが、手指の長さを半分程度に保ち、手根部の回転動作で手を捻る動作(これは水の抵抗に拠る受動的な動きが含まれる可能性もあります)、並びに指の間隔を拡大してそれを閉じたり広げたりする動作、この2つの動作で水中での巧みな且つ迅速な方向転換、姿勢転換を可能にしている様に見えます。まぁ、水中ツバメ返し泳法と言って良いかもしれません。これに対し、ウミガメの方は手足を利用しての方向転換なども勿論可能ではあるものの、やや動作が大まかになる様にも見えます。

 スッポンモドキは英名 Pig-nosed turtle と呼称され、鼻がブタの鼻に似ているのですが、身体付きの方も成体ではどっしりと肉厚化してブタを連想させなくもありません。それにも拘わらず、水中では浮力に助けられはするものの、俊敏な3D方向の自在な姿勢制御が可能であり、この点は忍者風に水中を切り裂くように遊泳するスッポンに似ていると感じてしまいます。

 次回からウミガメの話に入りますが、高度に適応した水棲 vs. 海棲のカメとして、最後にスッポンモドキとウミガメの遊泳戦略の違いについてお話しする予定です。一見似た様なヒレ状の手、即ち flipper フリッパーを持つカメ同士ですが、果たして何処までが同じでどこからが違っているのかを更に深く考える予定です。