Ken's Veterinary Clinic Tokyo

相談専門 動物クリニック

                               


























https://ja.wikipedia.org/wiki/ネズミ


https://en.wikipedia.org/wiki/Dipodidae







https://en.wikipedia.org/wiki/Caviidae

https://ja.wikipedia.org/wiki/テンジクネズミ科


https://ja.wikipedia.org/wiki/カピバラ

https://en.wikipedia.org/wiki/Capybara


https://en.wikipedia.org/wiki/Hydrochoerus

https://en.wikipedia.org/wiki/Lesser_capybara











院長のコラム 2021年4月20日


 ロコモーションの話 ー カメのロコモーションH








ロコモーションの話 ー カメのロコモーションH




2021年4月20日

 KVC Tokyo 院長 藤野 健です。

 カピバラと他の水棲齧歯類との運動特性の比較をこれまで行ってきました。最終的にビーバーの尻尾の扁平化の持つ機能的意義について考察しようと思いますが、その前に途中追加的にロコモーション関連の話をまた〜りと採り上げます。その第29回目です。運動性に関することですので、youtube からの動画資料を多くお借りしての解説です。

 爬虫類についてのお話の25回目です。引き続きウミガメのロコモーションについて扱います。




以下本コラム作成の為の参考サイト:


https://ja.wikipedia.org/wiki/カメ

https://en.wikipedia.org/wiki/Turtle


https://ja.wikipedia.org/wiki/ウミガメ

https://en.wikipedia.org/wiki/Sea_turtle


https://ja.wikipedia.org/wiki/ヒメウミガメ

https://en.wikipedia.org/wiki/Olive_ridley_sea_turtle


ヒメウミガメの Arribada アリバダ現象

https://ocean.si.edu/ocean-life/reptiles/kemps-ridley-nesting-arribada


https://ja.wikipedia.org/wiki/ケンプヒメウミガメ

https://en.wikipedia.org/wiki/Kemp%27s_ridley_sea_turtle


https://ja.wikipedia.org/wiki/アカウミガメ

https://en.wikipedia.org/wiki/Loggerhead_sea_turtle


https://ja.wikipedia.org/wiki/アオウミガメ

https://en.wikipedia.org/wiki/Green_sea_turtle


https://ja.wikipedia.org/wiki/ヒラタウミガメ

https://en.wikipedia.org/wiki/Flatback_sea_turtle


https://ja.wikipedia.org/wiki/タイマイ

https://en.wikipedia.org/wiki/Hawksbill_sea_turtle


https://ja.wikipedia.org/wiki/オサガメ

https://en.wikipedia.org/wiki/Leatherback_sea_turtle


http://www.seaturtle.org/mtn/archives/mtn58/mtn58p10b.shtml

Marine Turtle Newsletter 58:10-12, 2001

The Etymological Riddle of the Ridley Sea Turtle

Harold A. Dundee


http://ibimm.org.br/wp-content/uploads/2017/05/Wyneken-2001-The-anatomy-of-sea-turtles.pdf

NOAA Technical Memorandum NMFS-SEFSC-470

THE ANATOMY OF SEA TURTLES  by  Jeanette Wyneken, Ph.D. December 2001

 (後半にウミガメ内部を解剖した写真が掲載されていますので閲覧にご注意下さい。)







左列上から、ヒラタウミガメ、ヒメウミガメ、オサガメ

中列 タイマイ

右列上から、アオウミガメ、ケンプヒメウミガメ、アカウミガメ

https://youtu.be/VjYAk--PQSw から。



All Sea Turtles Species - Species List

2016/09/27 Gilles Delhaye

https://youtu.be/VjYAk--PQSw


各ウミガメ並びに棲息海域の紹介。順に、アオウミガメ、タイマイ、ヒラタウミガメ、

ケンプヒメウミガメ、ヒメウミガメ、アカウミガメ、オサガメ の紹介となります。






ウミガメ科の仲間




 先ずウミガメ科の全6種についてざっと概観してのちに、オサガメを含めたウミガメの遊泳ロコモーションついて纏めて扱いますね。

 ヒメウミガメ Olive ridley turtle Lepidochelys olivacea は各海洋の熱帯〜亜熱帯域及び北米大陸西岸沿いに、アオウミガメ Green turtleChelonia mydas タイマイ Hawksbill turtle Eretmochelys imbricata は各海洋の熱帯から亜熱帯、アカウミガメ Loggerhead turtle  Caretta caretta は亜熱帯から温帯域に見られますが、一方、ケンプヒメウミガメ Kemp's ridley turtle Lepidochelys kempi は北米大陸東岸沿いの熱帯から温帯域に掛けて、また  ヒラタウミガメ  Flatback turtle Natator depressus はオーストラリア北部海域から東西沿岸部に掛けての熱帯、亜熱帯、温帯海域に局在して見られます。ウミガメの幼体は外敵を避けるべく外洋に棲息し、成体になると沿岸域で生活するようになると言われていますが、アオウミガメとアカウミガメは成体も外洋で生活することがあると報告されています。まぁ、沿岸域の方が餌が抱負であり、強力な海流に押し流される虞も無く、生活し易そうなのは想像出来ます。日本周辺海域は世界的な漁場として知られていますが、魚類が棲息し易い大陸棚地形に加え、海流のぶつかり合いも発生し、餌となる小さな生き物が大量に存在するからです。それらを増やしているのは結局は陸地から流れ落ちる栄養分であり、海洋のど真ん中では食物連鎖の最初の生き物の蔭薄く、従って食物連鎖の上位に位置する肉食性動物も生存は困難になりますね。魚を増やしたいなら森を増やせ、との塩梅です。

 前回述べた様に、オサガメは体熱保持機構などの寒冷適応が一定程度進み、寒帯を除く外洋に広く分布しますが、これに対し、ウミガメ科の6種は、内温性化を進めておらず、寒いところは基本的に苦手であり、この為ウミガメと言うと、暖かいところの海域をのんびり遊泳していて、ヒトがダイビング中に、ウミガメが珊瑚礁やカラフルな魚と共に過ごしているシーンに出くわす、とのイメージが強いですが、実際大方その通りです。アカウミガメは他種に比べると、温帯域への分布を幾らか強めている様に見えます。






https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/5/51

/Hawksbill_turtle_doeppne-081.jpg  Tom Doeppner, CC BY-SA 3.0

<http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/>, via Wikimedia Commons


尖った吻先からタイマイである事がすぐに判別出来ます。写真ではちょっと分かり難いですが、

目の斜め右上に有る円形の小さな鱗 (surerocular scale 眼上鱗の中央鱗) の直後にある

やや大型の鱗 (frontoparietal scale 前頭頭頂鱗)の形態が、翼を広げたコウモリの形に

ちょっと似ていて、これからも見分けることが出来ます。




Fig.8 from http://ibimm.org.br/wp-content/uploads/2017/05

/Wyneken-2001-The-anatomy-of-sea-turtles.pdf


種の同定に利用される鱗は prefrontal scale (前前頭鱗)である。しばしば付加的な、

小さくて不正形な鱗 supernumery scale が中間に(複数個)介在する事が有るが

判別には無視する。






 現生 6種のウミガメ科のカメは 5属に分類され、その内のヒメウミガメ Olive ridley turtle Lepidochelys olivaceaケンプヒメウミガメ Kemp's ridley turtle Lepidochelys kempi のみが同じ属に属します。英名のridleyなる言葉の由来については各説が唱えられてはいますが、人名由来(実際、Ridley は人名に有ります)では無い模様です。米国ニューオリンズの Tulane University (オーデュボン動物園のすぐ近くにあり、院長もキャンパス内を散策したことがあります)の H.A. .Dundee 氏に拠れば、これはフロリダでの土着語として現地の爬虫類研究者に使われていた用語の可能性が高いが、由来の詳細は今もって不明、との見解です。日本語の和名でヒメが使われていますが、毎度の如くでサイズが小さいからでしょう。タイマイ の hawksbill は鷹のクチバシの意味ですが、他のウミガメに比較すると確かにトリのクチバシのように前方に突きだしており、これは珊瑚をバリバリ砕いてその隙間にある海綿を食べる為の適応です。餌由来の毒を体内に貯め込んでいることがあり、タイマイの肉は有毒となり食中毒事件を起こす例がありますが、これは他のウミガメでも起こり得ます。自身が毒を産生せずとも餌由来の毒素を貯め込む例は各種動物に見られますが、例えばフグ毒がそれに該当します。トラフグを完全養殖すれば無毒化することが知られています。アサリ、ホタテ、ハマグリなどの二枚貝が季節に拠っては基準以上の貝毒を持ち、漁協側の検査を通じて出荷停止になる時がありますが、これは有毒プランクトン由来の毒を蓄積するからです(下痢を起こす毒と神経毒)。この意味からも管理区域外での貝採りをして食べるのは命の危険となる場合があり、皆さんもご注意下さい。

 ウミガメはサイズ以外は互いに似た様な外見であり、ちょっと見には判別が困難な場合も多く、実際、別種同士で交雑が容易な面があります。これらウミガメ科の6種は実際似たもの同士と言う次第です。上記の様にタイマイはその特徴的な突き出たクチバシ形状、並びに頭部天頂のコウモリを思わせる形の鱗、松かさの様に重なる背甲の特徴から判断することがまだ容易な種です。このタイマイに関しても他種との交雑種が見付かっています。







http://ibimm.org.br/wp-content/uploads/2017/05/Wyneken-2001-The-anatomy

-of-sea-turtles.pdf, p.4 から一部トリミング


頭部背側の両目の間にある prefrontal scale (前前頭鱗)の数と、背甲の中央部並びにその

サイドの甲羅(各々vertebral scute 脊椎鱗甲, lateral scute 外側鱗甲)の数、それと腹甲

の inframarginal scute (辺縁下鱗甲)の数と穴の有無を組み合わせて判別が可能です。


上から、タイマイ、アオウミガメ、ケンプヒメウミガメ、ヒメウミガメ、アカウミガメ。ヒラタガメは

現在は独立した属に分類されていますが、嘗てはアオウミガメと同一の属とされ、実際のとこ

ろ、上記分類方ではアオウミガメと同じ特徴を有します。甲羅の高さが低いこと、またオース

トラリア北岸域に分布することからアオウミガメとは判別可能です。






ウミガメ科 どうやって区別するのか?




 ウミガメ科の現生種6種は、互いに交雑も可能なほど系統的には近いのですが、それ故、基本的な形態的特徴も互いに類似しています。すぐにお気づきかと思いますが、顔付き(目付き)も似ていますね。既にご紹介したオサガメに倣い、一通り見て行きましょうか。

 以下、2001年に出版されたウミガメの解剖に関する網羅的な論文がありますので、それを参考にしながらお話を進めて行きます。

http://ibimm.org.br/wp-content/uploads/2017/05/Wyneken-2001-The-anatomy-of-sea-turtles.pdf

NOAA Technical Memorandum NMFS-SEFSC-470

THE ANATOMY OF SEA TURTLES  by  Jeanette Wyneken, Ph.D. December 2001


 ウミガメ 6種を互いに外見的に明確に区別する為の方法が実は有ります。頭部背側の両目の間にあるprefrontal scale  (前前頭鱗)の数と、背甲の中央部並びにそのサイドの甲羅(各々vertebral scute 脊椎鱗甲, lateral scute  外側鱗甲)の数、それと腹甲のinframarginal scute ( 辺縁下鱗甲)の数と穴の有無を組み合わせて判別が可能です。タイマイの場合はクチバシや松かさ様に重なる甲羅からも容易に判別出来ますが、アカウミガメやアオウミガメなどは甲羅の色調からも大方は分かりそうですが、これは実は決め手にはなりません。アカウミガメとアオウミガメで迷った場合は、 lateral scule (外側鱗甲)の数が 4枚ならアオウミガメ、5枚ならアカウミガメと判断できます。アカウミガメの一番正先頭の lateral scule (外側鱗甲)は、一見すると背甲の周囲を取り巻くものの一部に見える時もありますが、注意して観察すると区別が出来ます。迷った時は prefrontal scale  (前前頭鱗)が単純に左右一対では無く、細かく分かれていればアカウミガメと判断できます。因みに院長宅の剥製標本の場合、甲羅の色調は赤茶色でアカウミガメかと一見思える個体ですが、 lateral scule (外側鱗甲)の数が 4枚であることに加え、大きめの prefrontal scale  (前前頭鱗)がスッキリと左右一対両目の間にありますので、アオウミガメであることが分かっています。

 因みにヒラタウミガメは現在は独立した属に分類されていますが、嘗てはアオウミガメと同一の属とされ、実際のところ、上記分類法ではアオウミガメと同じ特徴を有します。甲羅の高さが低いこと、またオーストラリア北岸域に分布することからアオウミガメとは判別可能です。ヒラタウミガメはまだ実態が良く判っておらず、今後の調査が俟たれるところです。外形からのみの判断になりますが、ヒラタウミガメはアオウミガメの同属別種扱いで良い様にも院長は感じています。院長宅の標本は、甲羅の高さが低いのでアオウミガメでは無く、ヒラタウミガメの可能性もあるかもしれません・・・。