ロコモーションの話 ー カメのロコモーションI |
||
2021年4月25日 KVC Tokyo 院長 藤野 健です。 カピバラと他の水棲齧歯類との運動特性の比較をこれまで行ってきました。最終的にビーバーの尻尾の扁平化の持つ機能的意義について考察しようと思いますが、その前に途中追加的にロコモーション関連の話をまた〜りと採り上げます。その第30回目です。運動性に関することですので、youtube からの動画資料を多くお借りしての解説です。 爬虫類についてのお話の26回目です。引き続きウミガメのロコモーションについて扱います。 以下本コラム作成の為の参考サイト:https://ja.wikipedia.org/wiki/カメhttps://en.wikipedia.org/wiki/Turtlehttps://ja.wikipedia.org/wiki/ウミガメhttps://en.wikipedia.org/wiki/Sea_turtlehttps://ja.wikipedia.org/wiki/アカウミガメhttps://en.wikipedia.org/wiki/Loggerhead_sea_turtlehttps://ja.wikipedia.org/wiki/アオウミガメhttps://en.wikipedia.org/wiki/Green_sea_turtlehttps://ja.wikipedia.org/wiki/オサガメhttps://en.wikipedia.org/wiki/Leatherback_sea_turtlehttp://ibimm.org.br/wp-content/uploads/2017/05/Wyneken-2001-The-anatomy-of-sea-turtles.pdfNOAA Technical Memorandum NMFS-SEFSC-470THE ANATOMY OF SEA TURTLES by Jeanette Wyneken, Ph.D. December 2001(後半にウミガメ内部を解剖した写真が掲載されていますので閲覧にご注意下さい。) |
||
ウミガメ科の形態@ 甲羅と四肢 前回コラムに続き、以下、2001年に出版されたウミガメの解剖に関する網羅的な論文がありますので、それを参考にしながらお話を進めて行きます。 http://ibimm.org.br/wp-content/uploads/2017/05/Wyneken-2001-The-anatomy-of-sea-turtles.pdfNOAA Technical Memorandum NMFS-SEFSC-470THE ANATOMY OF SEA TURTLES by Jeanette Wyneken, Ph.D. December 2001 まずは骨格形態ですが、背中側、腹側共に骨格成分の退化傾向は見られるものの、オサガメほど迄には達していません。アオウミガメの背甲ですが、スッポンとよく似ていて、肋骨の間の隙間が完全に埋まらずに、辺縁域に肋骨が櫛の歯の様に突出しています。それと距離を置いて、全体として楕円形を呈する皮骨が甲羅を縁取りしています。一方、腹甲側ですが、中央部に穴が開いていてその周囲を骨要素が繋ぐ構造です。オサガメでは、この骨要素の幅が非常に狭く、桿状になりますが、アオウミガメでは特に体幹の中央域部分 (これは元々は腹甲と背甲を連結する部分)の幅が大きくなっています。しかし、腹甲の骨要素は背甲とは連結せずに宙に浮いています。2つの<甲羅>は結合組織で連結していますので、解剖の際にはここにメスの刃を入れれれば簡単に分解が出来る訳です。この構造は、体腔容積の変動を或る程度は許容しますので、潜水時の水圧変動、呼吸、食物の飲み込み、卵の保持に役立つ可能性がありますし、雌個体が産卵の為に上陸する際には体重を減らして歩行に幾らか有利に作用するかもしれません。この様な現生ウミガメ科の甲羅の退化傾向はアーケロンなどにもよく類似しています。オサガメは背甲に頭尾方向に走る隆起がありますが、ウミガメ科の甲羅は丸味を帯びて平滑です。これは前方推進と言うよりは左右方向への回転運動、即ち方向転換をより容易にする筈です。小回りの利く動作が可能になりますがこの辺はスッポンなどにも類似しますね。 |
||
孵化中(卵から出る前)の骨格像では、肋骨が各々独立して側方にまっすぐに伸びており、互いに癒着するに至っていません。個体発生が系統発生を繰り返す、とのヘッケルの説に従えば、ウミガメ(カメ)の祖先が元々はバラバラの肋骨構造を持ち、それが進化の過程で幅を拡大して互いに癒合したことを如実に物語ります。実はこの状態はオサガメの成体によく似ており、オサガメでは、肋骨幅を拡大して互いに癒着させる遺伝子を元々持っていないのか、失ったのか、或いは遺伝子を持っていても発現させていないのか、それらの可能性を示唆し興味深く思います。 四肢骨については、足に比して手のサイズが拡大していますが、オサガメ程の大きさの違いは見られません。特筆すべきは、前肢骨を支えるベースとなる肩帯の3方に伸びる枝 (腹甲の体正中前方に向かう枝、背中に向かい脊椎骨のサイドに接着する枝、後内側方に向かい腹甲に貼り付く枝)の内、後内側方に向かい腹甲に貼り付く枝が強大で、身体の中央のレベルにまで後方に伸びます。この部分と上腕骨の間を筋肉が結び、上腕骨を後方に引いて推進力を得るものと思われますが、機能形態学的な解析を加えると面白ろそうですが、海流の中で強力に泳ぎ進む為には必要な構造なのでしょう。 |
||