軟骨魚類の羽ばたきロコモーションB エイ型ロコモーション |
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2021年6月10日 KVC Tokyo 院長 藤野 健です。 カピバラと他の水棲齧歯類との運動特性の比較をこれまで行ってきました。最終的にビーバーの尻尾の扁平化の持つ機能的意義について考察しようと思いますが、その前に途中追加的にロコモーション関連の話をまた〜りと採り上げます。その第39回目です。運動性に関することですので、youtube からの動画資料を多くお借りしての解説です。 ウミガメの様な羽ばたき型の遊泳ロコモーションを示す各種の動物をこれ以降見て行きましょう。 以下本コラム作成の為の参考サイト:https://ja.wikipedia.org/wiki/板鰓亜綱https://en.wikipedia.org/wiki/Elasmobranchiihttps://ja.wikipedia.org/wiki/エイhttps://en.wikipedia.org/wiki/Batoideahttps://en.wikipedia.org/wiki/Rajiformeshttps://ja.wikipedia.org/wiki/ガンギエイ目ガンギエイhttps://en.wikipedia.org/wiki/Skate_(fish)噴気孔https://en.wikipedia.org/wiki/Spiracle_(vertebrates)https://en.wikipedia.org/wiki/Electric_rayhttps://ja.wikipedia.org/wiki/シビレエイ目https://ja.wikipedia.org/wiki/トビエイ目https://en.wikipedia.org/wiki/Myliobatiformesアカエイhttps://en.wikipedia.org/wiki/Stingrayhttps://ja.wikipedia.org/wiki/アカエイ科トビエイhttps://en.wikipedia.org/wiki/Eagle_rayhttps://en.wikipedia.org/wiki/Mantahttps://ja.wikipedia.org/wiki/オニイトマキエイhttps://kids.nationalgeographic.com/animals/fish/facts/mobula-rayBibliography Database of living/fossil sharks, rays and chimaeras(Chondrichthyes: Elasmobranchii, Holocephali)https://shark-references.com/Development and Evolution of Dentition Pattern and Tooth Orderin the Skates And Rays (Batoidea; Chondrichthyes), L. Viriot, et al.April 2015 PLoS ONE 10(4)https://www.researchgate.net/publication/294582924_Development_and_Evolution_of_Dentition_Pattern_and_Tooth_Order_in_the_Skates_And_Rays_Batoidea_Chondrichthyes |
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エイ型ロコモーション サメは硬骨魚類などの一般的な形態と類似して、泳法も体幹を左右にくねらす方式を採っています。これに対し、広義のエイの仲間には、アカエイの様に体幹側面に連続して配列するヒレに前方から後方に向けて波動を起こして前進するもの、エイ型だが海底を尻尾の付け根にあるトゲを用いて歩行するもの、身体の前半はエイ型で偏平化しているが後半がサメ型を呈し、推進力を体幹後半を左右にくねらせてえるもの、また、トビエイの様に体幹左右に三角形の頂点のように突き出た大きなヒレを左右対称的に羽ばたかせて前方推進するもの、など様々な遊泳スタイルを持ち多様性に富んでいます。以下、個別に見て行きましょう。 ガンギエイ型平たい身体の左右に三角形に突き出た左右の胸びれに大きな波動を起こして前方推進しますが、この時体幹や尻尾は不動のままです。海底の平らな砂泥地の上を進む時には、胸びれの後方から突き出た棒状の腹びれを足として用い、左右対称的に砂泥に突き立てる様にして進みますが、船頭が棹を水底に差して進むのになぞらえ、英語ではこの動作を punting パンティング 竿差し漕ぎ、と呼称します。この間、身体の他の部分は微動だにせず、滑る様に海底を進むのですが、見ていて大変面白いです。方向転換する場合には胸びれを波動させて速度の調整などを行いもします。この桿状のヒレが陸生脊椎動物の後肢に相同なのかは興味深いところですが、ホウボウでは逆に胸びれから派生した前肢類似の構造で海底を歩行します。水中で浮力が効き体重を支持する必要ないところで、まず四肢としての前後往復運動性を獲得し、今度は浜辺に上陸する頻度を高め、抗重力性を加味したものが四肢の起源だろうと思いますが、それの初期段階が既に軟骨魚類に観察されるとの例でしょうか?シビレエイ型シビレエイの仲間は尾が発達し、前方の丸い部分と後ろの尻尾の部分の長さは大方等しいです。まぁ、ウチワ型とも言えます。反肉質の、尾端に尾びれの付いた尻尾を左右に振って推進力を得ます。この時にこの動作の反作用としてエイ型の前半分が左右に振れて回転運動します。頭部に垂直尾翼の様な縦方向のヒレが無く、回転を抑制出来ないのでしょう。これは、尻尾を振っての前方推進の完成度があまり高くないことを意味するものでしょう。アカエイ型体幹の周囲に広くヒレが拡大し、ガンギエイに比べるとより<円盤化>が進んで居ます。これはロコモーション的には四方いずれの方向にも滑る様に進むことが出来ることを意味しますが、まぁ、海中のUFOの様なものですね。浅海の海底面に沿っての移動運動性が基本ですが、海底から離れて遊泳も行います。この時、周囲のヒレ(胸びれ)に波動を発生させて進みますが、海底面上を進む場合などには波動の波高を小さくし速度を落として進むなど変幻自在な運動性を示します。体幹を反らして上方にターンする事も可能であり、思う以上に巧みな運動性を示します。どうもエイと言ってもけして馬鹿には出来ません。或る意味大変高度なロコモーションを行う生き物です。尻尾はトビエイの仲間の様に細い鞭状になるまでには至らず、そこそこの太さがあり、尻尾の中程付近に有毒なトゲを何本か備えます。捕食する敵に対しては尻尾を振り回して反撃します。 |
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トビエイ型この仲間は他の丸い型のエイとは異なり、ロコモーション的には底生生活は完全に止め、海中遊泳して進みます。体幹の左右に三角形型に張り出した大きな胸びれを羽ばたくようにして強力な推進力を産生して進みますが、胸びれ全体を1枚のヒレとして羽ばたき、ヒレの内部で小さな波を複数作り後ろに送る様な事はしません。単に背腹に動かすだけでは無く、ヒレに回転を加えて後下方へと水を押し出す動作をします。羽ばたき遊泳中の体幹は非常に安定しており、左右にブレることなくまっすぐに前進します。鞭状の非常に細い尻尾は遊泳中にまっすぐ伸ばしたままです。尻尾の基部にトゲを備える種もあります。砂泥中の餌を採る時には尖った吻先を持つ頭部を砂泥中に突っ込みます。名前の通り、海面から飛び出して空中を飛翔しますが、この時胸びれで数回程度羽ばたきます。大型のサメなどの捕食者から逃げる為にジャンプすると考えられています。イトマキエイ型これもトビエイの仲間ですが、頭部前面に左右1対の突出した装置を持ち、これが糸巻きを思わせるのでこの名前が付けられました。非常に大型化し、他のエイ類とは食性が全く異なり、プランクトンを食べますので、海面から浅いところを口を開けたまま周回します。100頭程度の群れを構成し移動します。トビエイとほぼ等しいロコモーション方式で遊泳し、空中へのジャンプも普通に観察されます。ジャンプ中に数回羽ばたきますが、この動作で浮力を得ている様には見えませんが、その内進化してトリの様に飛翔できるかも知れません。空中回転したりのアクロバティックなジャンプも示します。ジャンプは性成熟したことを示す、外部寄生虫を落とす、コミュニケーションする為などと考えられています。尻尾にはトゲを持ちますがケースに収められていて無害です。武器は持たずともその巨体或いは群泳して捕食者からは身を守る作戦です。 |
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