羽ばたきロコモーション 海鳥B |
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2021年7月1日 KVC Tokyo 院長 藤野 健です。 カピバラと他の水棲齧歯類との運動特性の比較をこれまで行ってきました。最終的にビーバーの尻尾の扁平化の持つ機能的意義について考察しようと思いますが、その前に途中追加的にロコモーション関連の話をまた〜りと採り上げます。運動性に関することですので、youtube からの動画資料を多くお借りしての解説です。 ウミガメの様な水中羽ばたき型の遊泳ロコモーションを示す各種の動物を引き続き見て行きましょう。 以下本コラム作成の為の参考サイト:https://en.wikipedia.org/wiki/Aukhttps://ja.wikipedia.org/wiki/ウミスズメ科https://en.wikipedia.org/wiki/Rhinoceros_auklethttps://ja.wikipedia.org/wiki/ウトウhttps://en.wikipedia.org/wiki/Teuri_Islandhttps://ja.wikipedia.org/wiki/天売島https://en.wikipedia.org/wiki/Kleptoparasitismhttps://ja.wikipedia.org/wiki/労働寄生https://ja.wikipedia.org/wiki/善知鳥https://ja.wikipedia.org/wiki/鳥島_(八丈支庁)https://en.wikipedia.org/wiki/Short-tailed_albatrosshttps://ja.wikipedia.org/wiki/アホウドリhttps://en.wikipedia.org/wiki/Tufted_puffinhttps://ja.wikipedia.org/wiki/エトピリカhttps://en.wikipedia.org/wiki/Horned_puffinhttps://ja.wikipedia.org/wiki/ツノメドリ |
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その他のウミスズメ科 ウトウとは 前回までにウミスズメ科のトリであるエトピリカのロコモーションについて触れましたので、ついでに?その周辺のトリについても触れることにしましょう。エトピリカはウミスズメ科ツノメドリ属に属しますが、その一番近縁な属がウトウ属ですので、ウトウについてまず扱っていきますね。 ウトウ (善知鳥) Rhinoceros auklet Cerorhinca monocerata はウトウ属の唯一の現存種です。Rhinoceros puffin と呼んだらどうかとも提唱されていますが、Rhinoceros は哺乳動物のサイを、puffin はエトピリカの仲間のツノメドリを意味します。この名称は 本種のクチバシの上の突起 (rhamphotheca 角鞘)がサイの角を連想させることに由来しますが、繁殖期の成体にのみ存在します。エトピリカのクチバシの込みいった鞘と同様に毎年新たに生え替わります。この角は実は蛍光発色性を持ち、おそらくは生殖の為の信号装置として機能しているのでしょう。ウトウは一夫一婦制の終生に亘る番いを作るトリですが、上下のクチバシと繁殖期のツノが発する蛍光の量が個体ごとに異なり、個体識別に役立っているのではないかとの説も提出されています。繁殖期には目の後ろとクチバシの後ろの白くて細い毛の束も現れます。ツノとこれらの毛の束は冬期には脱落します。ボデイサイズはエトピリカと同程度でハトよりは大きいです。 ウトウは、朝鮮半島、北日本沿岸から、樺太、アリューシャン列島、更に北米大陸の西岸に沿いカリフォルニアのチャンネル諸島に至るまでの北太平洋沿岸に広く分布します。沖合並びに沿岸域にて越冬しますが、季節変化に応じて幾らかの移動を示す場合もあります。本邦の北海道の天売島が世界最大の繁殖地として知られ、約100万羽が繁殖することが知られ、「天売島海鳥繁殖地」として国の天然記念物に指定されています。繁殖維持に問題は見られず絶滅のおそれは有りません。本種に近いエトピリカが個体数を減らしてきていますが、本種が栄えているのはその地味な外見が役立っているからなのかも知れませんね。 繁殖期は初夏に始まり、5,6月の間に亘ります。土に1〜5m程度の巣穴を掘ったり天然の洞窟や空隙を利用します。緩やかな傾斜地に巣穴を構えるのを好みますが、これはウトウの飛翔力が劣る為です。雛がかえると、親鳥は夜間に給餌しますが、これは捕食者を避け、カモメなどから捕食した餌を奪われること(労働寄生 kleptoparasitism) への応答であると信じられています。ウトウは小魚類やイカなどを捕食します。餌を求めて巧みに潜水しますが、水深57m、148秒の潜水時間が記録されています。 |
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ところで何故<ウトウ>と呼ぶのでしょうか?能楽の演目である『善知鳥』では、下記の様にウトウの親鳥の鳴き声に由来するとの考えに立つ様ですね: 以下wikipedia から引用、ウィキペディアの執筆者. “善知鳥”. ウィキペディア日本語版. 2021-05-13.https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E5%96%84%E7%9F%A5%E9%B3%A5&oldid=83475318,(参照 2021-06-26).「善知鳥(うとう)は、能の演目のひとつ。ウトウという鳥を殺して生計を立てていた猟師が死後亡霊となり、生前の殺生を悔い、そうしなくては生きていけなかったわが身の悲しさを嘆く話。人生の悲哀と地獄の苦しみを描き出す哀しく激しい作品となっている。四番目物(五番立てと呼ばれる正式な演能の際に四番目に上演される曲で、亡霊などが主役になるもの)で、喜多流では「烏頭」と呼ばれる。 また、地唄にもこの能を基にした曲があり、地唄舞の演目としても知られる。あらすじ旅の僧侶が立山にさしかかったとき、猟師の亡霊が現れ、現世に残した妻と子のところに蓑笠を届けて、仏壇にあげるように頼む。僧侶は承諾するが、この話を妻子に信用させるために何か証拠の品を渡すように言い、猟師は生前着ていた着物の片袖を渡す。僧侶が陸奥国の外の浜にある猟師の家を訪ね、妻子に片袖を見せると二人はただ泣くばかり。僧侶が蓑笠を仏壇にあげて経を唱えると、猟師の亡霊が現れ、地獄の辛さを話し、殺生をしたことや、そうしなくては食べていけなかった自分の哀しい人生を嘆く。ウトウは、親が「うとう」と鳴くと、子が「やすかた」と応えるので、猟師はそれを利用して声真似をして雛鳥を捕獲していたため、地獄で鬼と化したウトウに苦しめられ続けていると話し、僧侶に助けを求める。 」 殺生をしなければ生きて行けない者の悲哀と地獄行きの辛さを語る能の演目ですが、これがキリスト教圏になると、動物とは人間が利用して良い様に神が拵えた存在ですので、殺生の罪の概念は基本的にはありません。命を連綿と繋げていくためには食と性が欠かせませんが、日本では<食>に纏わる殺生が禁忌となり(不思議なことに魚類には及ばない)、一方、キリスト教圏では<性>へのタブーが強く残りました。例えば繁殖期の離島に渡り、ウトウを捕獲しようとすれば一網打尽で捕獲し大金を得ることも出来たろうと想像しますが、後ろめたさも募っていく訳ですね。伊豆諸島の鳥島はアホウドリの営巣地ですが、八丈島出身によって1887年(明治20年)から捕獲が始まり、捕獲が禁止される1933年(昭和8年)まで推定約1,000万羽が乱獲されました。羽毛採取の為に住んでいた島民125名が1902年の大噴火で全滅したのですが、生き物を殺生して自分たちが大儲けしたがゆえに、他からの同情にも限界があったろうことは想像されます。ひょっとすると、関係者等は、地獄で鬼と化したアホウドリに苦しめ続けられているやも知れませんね。 |
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