羽ばたきロコモーション 海鳥H |
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2021年8月1日 KVC Tokyo 院長 藤野 健です。 カピバラと他の水棲齧歯類との運動特性の比較をこれまで行ってきました。最終的にビーバーの尻尾の扁平化の持つ機能的意義について考察しようと思いますが、その前に途中追加的にロコモーション関連の話をまた〜りと採り上げます。その第49回目です。運動性に関することですので、youtube からの動画資料を多くお借りしての解説です。 ウミガメの様な水中羽ばたき型の遊泳ロコモーションを示す各種の動物を引き続き見て行きましょう。 エトピリカのロコモーションの項 https://www.kensvettokyo.net/column/202106/20210625/ にてもチラと触れましたが、ウミスズメ科とは別の科に属し、潜水動作を活発に行うトリとして、ウの仲間を引き続きご紹介しましょう。今回は飛べないウとして知られるガラパゴスコバネウ並びに棲息地であるガラパゴス諸島についてざっとお話しして行きます。次回にはこのウの機能形態面について論考する予定です。 以下本コラム作成の為の参考サイト:https://ja.wikipedia.org/wiki/ウ科https://en.wikipedia.org/wiki/Cormoranthttps://en.wikipedia.org/wiki/Flightless_cormoranthttps://ja.wikipedia.org/wiki/ガラパゴスコバネウhttps://en.wikipedia.org/wiki/Gal%C3%A1pagos_Islandshttps://ja.wikipedia.org/wiki/ガラパゴス諸島https://galapagosconservation.org.uk/wildlife/flightless-cormorant/英国ガラパゴス保護機構Flightless Cormoranthttps://en.wikipedia.org/wiki/On_the_Origin_of_Specieshttps://ja.wikipedia.org/wiki/種の起源 |
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ガラパゴスコバネウ Flightless cormorant Phalacrocorax harrisi ガラパゴスコバネウ ガラパゴス小羽根鵜 flightless cormorant (Galapagos cormorant とも呼称される) Phalacrocorax harrisi は、飛べない鵜として非常に有名なトリです。エクアドルのガラパゴス諸島の内の、 イサベラ島北部および西部・北東部の一部、フェルナンディナ島の2島にのみ棲息するウです。分類的には、過去には本種のみを一属一種の Nannopterum 属に含めるなどされましたが、最近の分類では他のウの仲間と同じく Phalacrocorax 属に含めるのが主流です。名前の通り空中を飛翔出来ませんが、飛べないのはウの仲間の内の唯一の種になります。 ここでガラパゴス諸島−スペイン語でゾウガメを意味する galapago に由来−についてざっと触れておいた方が良さそうですね。日本文化は極東の離れ小島で独自の高度な発展を遂げたがゆえに、他の世界の世界認知軸とは座標系を別のものとしており、その秩序の元で運営されている社会です。物作り、教育、言語、対人関係観、宗教観、自然観、そして動物観からして大きく異なり、他国から日本へ、そして日本から他国に渡り生活することは、大きな文化的衝撃を当人に与え、良い意味での intercultural な break through 突き抜け、を得られる大きな利点があります。これが孤立して独自の動物相を発達、維持させているガラパゴス島になぞらえられ、携帯電話1つとってもガラパゴス携帯などと日本人自らがは呼びますが、そこに別段卑屈な姿勢は存在しません。ガラパゴス諸島は、複数の大小の島と岩礁から構成される島嶼ですが、エクアドル−Ecuador はスペイン語の赤道の意−本土の西約906キロにあり、現時点では123の島に名前がついています。最北のダーウィン島と南のエスパニョラ島の間は220km離れており、最大のイサベラ島は面積44588平方km(四国の面積の1/4)の火山島で、その島のウォルフ火山は海抜1700mに達します。 数多くの固有種で知られており、チャールズ・ダーウィンがビーグル号での第2回目の航海時にそれらを調査し、彼の観察と標本収集は、彼の、自然淘汰を通じての進化理論構築の発端に貢献しました。まぁ、隔絶された地理的位置にあり、各々の島が海流で遮断され交通が困難であり、各島での動物が独自の進化を示すに至った島嶼です。本邦の場合は4つの大きな島の間の行き来は特に困難ではありませんが、大陸とは日本海流並びにしばしばの荒天に阻まれ、行き来は容易ではありませんでした。しかしそれも、ガラパゴス諸島と南米大陸との隔絶を考えるとだいぶマイルドには見えます。孤立した島嶼で棲息する動植物が独自の進化を遂げる例は、東京都の小笠原諸島の動植物になどにも見られ、現象としてはそれ自体は珍しいことではありませんが、ガラパゴスの場合は、多種の独自な種が島嶼内の島毎(小笠原と異なり各島のサイズが大きい)に明確に棲息し、それがダーウィンの脳髄を大きく刺激したと言う話でしょう。 ガラパゴス諸島の動物相 fauna については改めて別項にて解説したいと考えて居ますが、10回以上の長期シリーズになりそうな予感はします。その前にもう一度 『種の起源』 を批判的観点も交えて読み直す必要もありそうで・・・。 |
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以下、https://en.wikipedia.org/wiki/Flightless_cormorant からの部分和訳 (パラグラムタイトルのみ改変)Wikipedia contributors. "Flightless cormorant." Wikipedia, The Free Encyclopedia. Wikipedia, The Free Encyclopedia, 28 Jul. 2021. Web. 1 Aug. 2021.形態と習性他の全てのウと同様、本種は趾間にヒレのある頑丈な足を備え、水中で強力に漕ぎ進め魚や小型のタコ、他の小さな海棲動物を補食します。海底の獲物を捕食しますが海岸から200m以上離れる事はありません。ウの仲間では最大種で、全長89 - 100cm、体重 2,5−5.0kg、翼の長さは飛翔に必要と考えられ長さの1/3に留まります。飛翔に必要な筋肉が付着する場である胸骨の竜骨突起も、また著しく縮小しています。本種は、彼らの短くギザギザの翼を除いては、ちょっとアヒルのように見えます。体幹の上半分は黒く、下部は茶色を呈し長いくちばしは先端で曲がり、目はトルコ石の色です。ウ科のすべての仲間と同様に、4本の趾(あしゆび)はヒレ皮によって繋り、雌雄は外観が似ていますが、雄は大きく約 35%が重いのです。若い個体は大方は成体に似ていますが、色が暗く、身体が艶のある黒色である点で異なります。成体は低いうなり声で発声します。他のウと同様、この鳥の羽根は防水性を持たず、一回の潜水毎に陽光下でその小さな羽を乾燥させて過ごします。彼らの風切り羽根とその輪郭形態は他のウと非常に似ていますが、本種の体幹の羽根ははるかに厚く、柔らかく、より濃密に生えています。尾腺からは非常に少ないアブラしか出ません。密な羽毛に閉じ込められている空気層が身体が水びたしになるのを防ぎます。分布と生息地このユニークなウはガラパゴス諸島に固有のもので、その内の僅か2つの島、即ちフェルナンディナ島、及び、イザベラ島の北西部の海岸にのみ棲息します。これは、東へ向かって流れる赤道深層の季節的な湧昇 (クロムウェル海流) に関係していますが、この流れが冷たく栄養豊富な海水をガラパゴス諸島西側のこの2つの島に供給する訳です。個体数はこれまでに激しい変動を受けました。 1983年に発生したエルニーニョの南方への振れ EL Nino-Southern Ovishillation(ENSO) で個体数は 5割の400頭iに減少しましたが、その後急速に回復し1999年までに推定 900頭に増加ました。本種は、火山島の岩礁海岸に生息し、湾や海峡を含む浅い沿岸水域で採餌をします。本種は場所を移動しない性質が非常に強く、自分が居住する数百メートルの長さの海岸線の範疇で、生活の殆どの時間を過ごし、また繁殖します。この固着的な性質は、主たるコロニー間で、特にフェルナンディナ島とイザベラ島の間のコロニー間に於ける遺伝的違いに反映されています。繁殖営巣は、海面温度が最も寒く餌が豊富で、雛への熱ストレスの危険性が低下する4月〜10月の間に起こる傾向があります。現時点では、最大約12対からなる繁殖コロニーが知られています。求愛行動は海で始まります。雌雄は首を蛇の様に曲げて互いの周囲を泳ぎます。それから彼らは土地に移動します。営巣用の海藻は、主に雄によって持ち込まれ、雌に贈られ編み込まれます。巣は高潮帯のすぐ上に作られます。雌は一般的に巣ごとに3個の白い卵を産みますが、通常は1頭の雛だけが生き残ります。孵化の為には雌雄が均等に協力します。孵化後には、両親は雛を熱や寒さ、捕食からの守り、給餌すべく、引き続き責任を共有し続けます。尤も、雌は雄よりも40−50%多い餌を雛に提供します。雛が独立する70日齢に近づいている時に、仮に餌が豊富であるならば、雌はそれ以降の雛の世話を任せ、新たな雄と番い繁殖を進めます。斯くして、雄ではなく雌個体が、一繁殖シーズンに複数回の繁殖を行い得るのですが、10年以上の研究は、これを可能とする十分な餌が入手出来る環境条件はまれにしか起きないことを示しています。両性の年間生存率は凡そ90%で、寿命は凡そ13年です。 繁殖による集団の増加は本種個体数を維持するのに十分です。保護本種は捕食者の居ない生息地で進化しました。敵が全く存在せず、主に餌に富んだ海岸線に沿って潜水しして食物を摂取し、繁殖地に旅行する必要がないので、鳥はついには飛ばなくなりました。実際、風切り羽根で空気を抱える造りの翼は、海表面から潜水するウには不利であったろうと思われます。しかし、人間が島を発見して以来、島は捕食者フリーではない状態が続いています。長年に亘り、猫、犬、豚が島に持ち込まれ続けています。更に、本種は人間を恐れず、簡単に近づくことができ、捕獲できます。過去には、持ち込まれ野生化したイヌが、イザベラ島の本種に大きな脅威でしたが、その後島から根絶されています。フェルナンディア島へのラットや猫の将来の持ち込みは、種に対する潜在的な巨大な脅威です。漁網は現在の脅威となっています。これは、ウの餌の入手可能性を低下させるだけでなく、しばしば鳥が網に巻き込まれて死に至る結果をもたらしています。季節的な寒冷水が本種の繁殖戦略を形作ってきました。繁殖期間の数度の海面温度の上昇やそれが繁殖期を通じて維持されること (すなわちENSO発生)は、繁殖成功率を低下させます。 ENSO発生は、最近の数十年間で頻度と規模を増加させている様に見えますが、これは気候変動に関連する可能性があります。大規模な原油流出は脅威をもたらすでしょう。しかしながら、本種の生息数は小さくその範囲が限られており、本種の繁殖能力は、個体数が危機的水準を超えている限り、災害からは迅速に回復することができるのです。本種は世界的な珍鳥です。2004年に チャールズ・ダーウィン研究所 が行った調査は、約1500頭が維持されていることを示しました。 2009年に、バードライフインターナショナルは、僅か900頭と算定しましたが、より最近の2011年の評定では1679頭としています。本種は以前は IUCN によって絶滅危機種に分類されましたが、最近の研究は、本種が以前に信じられていたほど稀なトリではなくなり、生息数が安定していることを示しています。その結果、本種は2011年に脆弱種へとランクダウンしました。本種の全個体はガラパゴス国立公園および海洋保護区の中に棲息しています。さらにガラパゴスの島々は1978年に世界遺産に登録されました。チャールズ・ダーウィン研究所は、経時的な個体数の変動を追跡するために定期的に種を監視して来ています。保全の為には、年間監視プログラムの継続、種棲息地域内の人間の訪問の制限、および鳥の採餌範囲内での網を用いる漁業の防止が提言されています。(以上院長訳) |
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