羽ばたきロコモーション 海鳥14 |
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2021年8月25日 KVC Tokyo 院長 藤野 健です。 カピバラと他の水棲齧歯類との運動特性の比較をこれまで行ってきました。最終的にビーバーの尻尾の扁平化の持つ機能的意義について考察しようと思いますが、その前に途中追加的にロコモーション関連の話をまた〜りと採り上げます。その第49回目です。運動性に関することですので、youtube からの動画資料を多くお借りしての解説です。 ウミガメの様な水中羽ばたき型の遊泳ロコモーションを示す各種の動物を引き続き見て行きましょう。カモの仲間のお話に入りますが、お盆も過ぎ秋の気配も漂って来ましたので、ロコモーションの前に食材としての話から始めましょうか。 以下本コラム作成の為の参考サイト:https://en.wikipedia.org/wiki/Duckhttps://ja.wikipedia.org/wiki/カモhttps://en.wikipedia.org/wiki/Mallardhttps://ja.wikipedia.org/wiki/マガモhttps://www.kunaicho.go.jp/about/shisetsu/others/kamoba.html宮内庁 御料牧場などhttps://en.wikipedia.org/wiki/Domestic_duckhttps://ja.wikipedia.org/wiki/アヒルhttps://en.wikipedia.org/wiki/Muscovy_duckhttps://ja.wikipedia.org/wiki/ノバリケンhttps://en.wikipedia.org/wiki/Peking_duckhttps://ja.wikipedia.org/wiki/北京ダックhttps://en.wikipedia.org/wiki/Foie_grashttps://ja.wikipedia.org/wiki/フォアグラhttps://en.wikipedia.org/wiki/Century_egghttps://ja.wikipedia.org/wiki/皮蛋https://ja.wikipedia.org/wiki/がんもどき |
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カモ duck とは? 本邦には渡り鳥として冬場を中心として各種のカモやツルの仲間が飛来し、都心部でも公園の池などに浮かんでいる姿を良く見る事が出来ます。院長の高校からも近かった上野の不忍池には冬期に大量のカモが飛来し、間近で観察することも出来ますし、以前、『忠犬ハチ公と農科大学』のコラムにてチラとご紹介しましたが、森鴎外 『雁』 の一番最後の弐拾弐にて、帝大の同じ学科の石原が石を当てて落とした雁を、夕方の薄暗がりの中、不忍池に入り引き揚げるのを「僕」 と岡田が見ているシーンの描写があり大変印象的です。考えて見れば、都心にて野生の鳥獣をこれほど間近で観察出来る機会はこれ以外には無いでしょう。但し、インフルエンザ等の各種のウイルスを媒介する生き物でもありますので、接近する場合は塵埃を吸い込まぬ様にマスクを着用した方が良さそうには思います。大方の雁鴨類は冬鳥ですが、カルガモやオシドリは渡らずに通年観察する事ができます。皆さんご存知の様に、カルガモが雛を引き連れて池を移動するシーンは毎春マスコミが採り上げる定番ネタですね。一部のカモは狩猟対象種であり、伝統的な猟法から銃器使用に拠る狩猟まで執り行われます。実はカモとは通称であり、カモ目カモ科の鳥類の中で、見た目が雁(カリ)に比べて体が小さく首があまり長くないものの総称であり、独立した分類項目ではありません。 マガモ Mallard or Wild duckAnas platyrhynchos は汎世界的に温帯域を中心に分布しますが、越冬の為に晩秋に日本に飛来し春先にはカップルを作り北の繁殖地に戻ります。冬場には都内各地の河川や湖沼の何処にでも目撃される種類ですが、実は各地の海辺や河口付近でも観察されます。狩猟もされ、その余興で作成した剥製(オス個体が大半、メスは色彩が地味ゆえ売り物にならない)なども数多く出回るのですが、買い求める者はごく少数でしょう。と言いますが狩猟者の自己満足の意味合いが強そうです。院長の父親は一級建築士でしたが、図面の消しかすを払うのに鴨の羽根のハタキを愛用していました。現在でもこれは普通に入手出来ますし院長も1つ持って居ます。 マガモなどは古代から食用とされて来ましたが、当時の人々には食べ物に事欠く冬場に勝手に<向こう>から遣って来てくれる有り難いご馳走扱いだったのでしょうね。弓矢で撃ち落とすか、囮の鴨(デコイ)で引き寄せて投網を投げかける様な方法で捕獲したのでしょう。現在、宮内庁が管轄する鴨場としては、埼玉県越谷市の「埼玉鴨場」と千葉県市川市の「新浜鴨場」の2か所があり、両鴨場のそれぞれ約12,000平方メートルの元溜 (もとだまり)と呼ばれる池には,毎年1万羽を超える野鴨などの渡り鳥が越冬のため飛来します。鴨場は,鴨の狩猟期間 (11月中旬から翌年2月中旬)に,天皇陛下の御発案に拠り内外の賓客の接待の場として使用されますが、狭い水路に訓練したアヒルを用いて鴨を誘導し、待ち構えていた者がそれを大きな玉網(叉手網 さであみ)で捕獲する方式です。昆虫採集で蝶を捕獲する遣り方と大差はありません。野生のトリですので狩猟免許や狩猟方法を環境庁などに事前申請する手筈と思いますが、足輪を付けて放鳥するので学術的な生態調査扱いなのかもしれません。余談ですが、鴨の捕獲に当たる職員らは普段は那須の御料牧場に勤務する者らをこの時に臨時に派遣するのでしょうか? |
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カモの家禽化された種類には、アヒル(Domestic duck, マガモ由来)、バリケン(Muscovy duck, 南米産のカモの一種ノバリケンを家禽化したもの)などがあります。アヒルは肉、卵、ダウン採取の為、或いは公園の池などに放って鑑賞するペット用途に改良された家禽です。院長の通った小学校の小池にも白いアヒルが放たれていたことを鮮明に思い出します。カルガモとアヒルの交配種である合鴨は院長もよく食べます。ローストにしてオレンジソース掛けにしても美味しく、スライスした肉は鴨葱丼の具にしたり鴨蕎麦に利用したりもできます。胸肉を脂肪を付けたままで大きなサイコロ型にブツ切りにし、金串に刺して岩塩を降り、焼き鳥にしても大変美味しく食することが出来ます。野生の鴨は季節に拠り食べる餌が異なり、穀類を鱈腹食べて肥えた冬場は美味いのですが、昆虫類を食べるそれ以外の季節ははツーンとした臭みが強くなります。狩猟後直ちに放血して血抜きを徹底すればまだ良いですが、あとは適宜薬味を利用して臭みを取る調理になります。この辺は海産魚の扱い(旬と調理法)に似ています。 北京ダックはアヒルのローストですが、皮+皮下組織の部分のみ食します。院長も横浜中華街の名店で食べた経験はありますが、値段の割には大した食材でも無い様に感じますが、中国人は珍重する様ですね。因みに中華圏では動物の皮が好まれ、ブタにしても皮が余った品種が飼育されますし、実はチャウチャウも元々は食用に改良されたイヌ!になります。 皮蛋(ピータン)はアヒルの卵を強アルカリ下に於いてタンパク質を固めて熟成した食べ物ですが、日本人にはちょっと受け入れ難い食材でしょう。タンパク質の凝固を強めるためにウラで鉛の化合物を利用する例が多く、健康被害も懸念されるところがあります。 日本のがんもどきは、「雁擬き」であり、豆腐をメインに適宜混ぜ物を入れ、カモの味に似せたところに由来するとの説があります。西日本では飛竜頭(ひりゅうず、ひりうず、ひろうす、ひりょうず)とも呼ばれ、実際、金沢出身の院長の友人は、上京時にがんもどきの語を理解せず、現物を見せると、あっ、これはひろうずと呼ぶものだと教えて呉れました。語源はポルトガルのフィリョース(小麦粉と卵を混ぜ合わせて油で揚げたお菓子)であるとも主張されており、がんもどきも天ぷら同様に南蛮由来の起源を持つ食材なのかも知れません。味は鴨肉に似ても似つきませんが、昔の人はこれで我慢して来たのでしょうか?余談ですが、youtube で、さるメキシコ女性がメキシコではボイルした牛乳の表面に出来る膜(固有名詞が付けられています)を掬い取り、それから母親がクッキーを作ってくれたが最高に美味しかったと話していました。これは日本だと豆乳から作る湯葉に相当しますが、日本では畜産品の代わりに大豆タンパクで類似したものを作る食文化が見られる様ですね。 世界三大珍味の1つフォアグラは、アヒルやガチョウに穀物を強制給餌させて脂肪肝にしたものを食するものですが、出荷前の28日間、毎日トリの口を開かせて漏斗の口の様な道具を差し込み餌を流し込みます。トリの側は元々歯が無く餌は丸呑みですが、砂肝で穀物をすり潰して胃に送る仕組みです。動物虐待だと近年は騒がれもしますが、主たる生産国であるフランスとハンガリー政府は生産者達の権益を守っています。スペインの闘牛がけしからんと主張したり日本の捕鯨を止めろと主張する様な国には、アフリカから同じ人間である黒人を奴隷として拉致し、現在に至るも酷い扱いをする国、或いは勝手に植民して先住民の生活していた大陸を乗っ取り、ここはオレの国だ何が悪いと平然としている国なども混じり、相手からの、お前のところは野蛮だとの一方的な主張など正々堂々と却下して自国の食文化を守ることには一理あります。まぁ、外交上、黙っていないで相手国の歴史性を知り、その基盤の上に自然科学的にガツン!と反論することが大切でしょう・・・。 フォアグラはフランスではクリスマス料理には欠かせない食材となっています。見た目はアンキモに似ていますが、院長の経験ではアンキモの方が美味かったような・・・。真冬にアンキモをつまんで熱燗を流し込むのが最高で。但し、食べ過ぎるとビタミンA中毒になりますのでご注意を。 因みに、アヒルは野生のマガモを飼いならして家禽化する過程で多くの品種が作出されましたが、翼が縮小して極く短距離しか飛翔出来なくなりました。これはおそらくは人間の側が飛んで逃げないような方向に選別を続けた結果の反映でしょう。他方、バリケンの方は飛翔能力がまだ遺っていて、時折各地で逃げ出して半野生化した個体が観察されます。家禽化の完成度が高くはないのかもしれません。アヒルの方は、元々野生状態で飛ぶ力をほぼ失っていたセキショクヤケイを家禽化したニワトリとは、飛べない事の由来が異なっている訳ですが、翼退化の遺伝的なメカニズムは人為的な選別圧にしろ自然淘汰圧によるものにしろ、実は似通っているのかも知れませんね。 |
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