飛べないトリとは@ |
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2021年10月5日 KVC Tokyo 院長 藤野 健です。 カピバラと他の水棲齧歯類との運動特性の比較をこれまで行ってきました。最終的にビーバーの尻尾の扁平化の持つ機能的意義について考察しようと思いますが、その前に途中追加的にロコモーション関連の話をまた〜りと採り上げます。トリの羽ばたきロコモーション付いて見て行きましたが、序でに?翼を使わずに地上生活するに至ったトリのロコモーションについて採り上げましょう。運動性に関することですので、youtube からの動画資料を多くお借りしての解説です。 以下本コラム作成の為の参考サイト:https://ja.wikipedia.org/wiki/フォルスラコスhttps://en.wikipedia.org/wiki/Phorusrhacos(https://www.cambridge.org/core/journals/journal-of-paleontology/article/new-skull-remains-of-phorusrhacos-longissimus-aves-cariamiformes-from-the-miocene-of-argentina-implications-for-the-morphology-of-phorusrhacidae/78414E4359C85B439EA7981FC774FE70New skull remains of Phorusrhacos longissimus (Aves, Cariamiformes) from the Miocene ofArgentina: implications for the morphology of PhorusrhacidaePublished online by Cambridge University Press: 12 July2019,Journal of Paleontology Volume 93 Issue 6(無料で全文にアクセス出来ます)https://ja.wikipedia.org/wiki/ヤンバルクイナhttps://en.wikipedia.org/wiki/Okinawa_railhttps://ja.wikipedia.org/wiki/キウイフルーツhttps://en.wikipedia.org/wiki/Kiwifruithttps://ja.wikipedia.org/wiki/キーウィ_(鳥)https://en.wikipedia.org/wiki/Kiwi_(bird)https://en.wikipedia.org/wiki/Flightless_cormoranthttps://ja.wikipedia.org/wiki/ガラパゴスコバネウhttps://en.wikipedia.org/wiki/New_Zealand_parrotフクロウオウム科https://en.wikipedia.org/wiki/Kakapohttps://ja.wikipedia.org/wiki/フクロウオウムhttps://en.wikipedia.org/wiki/New_Zealand_kakahttps://ja.wikipedia.org/wiki/カカhttps://ja.wikipedia.org/wiki/ドードーhttps://en.wikipedia.org/wiki/Dodohttps://en.wikipedia.org/wiki/Common_ostrichhttps://ja.wikipedia.org/wiki/ダチョウhttps://en.wikipedia.org/wiki/Southern_cassowaryhttps://ja.wikipedia.org/wiki/ヒクイドリhttps://en.wikipedia.org/wiki/Emuhttps://ja.wikipedia.org/wiki/エミューhttps://en.wikipedia.org/wiki/Rhea_(bird)https://ja.wikipedia.org/wiki/レア (鳥類)https://www.nationalgeographic.com/science/article/on-islands-even-flying-birds-are-edging-towards-flightlessnessBirds on Islands Are Losing the Ability to FlyByEd Yong Published April 12, 2016 |
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飛べないトリとは 前回コラムまでに扱ったペンギン或いはガラパゴスコバネウなどを含め、翼での空中飛翔性を失い、各々の生息環境に適応して進化したトリはそこそこ見られます。例えば大変身近な家禽のニワトリ自体がまともに空中飛翔する能力を失いつつあるトリと考える事も可能ですし、同じキジ科のキジやクジャクも地表生活性を強化しています。ヤンバルクイナの様なクイナの仲間も飛翔性を弱めた仲間です。ニュージーランドのキウイやフクロウオウムも飛べない事で有名ですね。他方、広大な平原を備える土地には、走るのに特化しボディサイズも大型化させたアフリカ大陸のダチョウ、オセアニアのエミューやヒクイドリ、新大陸のレアも知られますし、これらは動物園でもお目に掛かれますし、ダチョウやエミューは国内でも家禽として飼育繁殖もされています。過去にはフォルスラコスの様な巨鳥−当然空中飛翔性は失っていた−も棲息していました。これは新生代中新世 (2000-1300万年前)のパタゴニアに生息した肉食性の飛べない鳥ですが、背丈は 2.5m、体重 130kg と推定され、また巨大な頭蓋骨は60cmに達していました。この様なトリに追い掛けられたら恐怖しかありませんね。 空中飛翔が出来れば捕食者が接近してもサッと相手の手が届かないところに逃げることが出来ますし、水圏の上を横切り移動し、上空から餌を効率よく見つける事もできます。近年、ヒトがドローン機材を用いて、自分たちの街や自然の光景を容易に俯瞰することが出来る様になりましたが、飛翔する生き物は昔からそれが当たり前に出来ていた訳です。まぁ、生態的には圧倒的に特権的地位を得る事が可能になります。 逆にこの特権を失った場合ですが、捕食者が居ない或いは少ない特殊な環境下で生き延びる、或いは二本の脚の力を利用して敵から逃げ去る、或いは脚やクチバシを武器として相手を制するなどまでに進化しないと、命脈を後に繋ぐ事が出来ません。前回までに扱ったペンギンについて考えてみますと、仮に彼らがアフリカのサバンナなどに放たれた場合、歩行も得意では無く飛翔は全く出来ませんので、即座に捕食されて終わるでしょう。この様に想像すると、ペンギンが絶海の孤島である南極大陸を中心として進化し、そこが<供給元>となり敵の居ない島嶼や辺境の地で分化・放散した事が良く理解出来ると思います。飛翔性を失いましたが、ペンギンは羽ばたき動作は維持しつつ潜水に特化してそれを利用しているトリになります。 院長の専門が脊椎動物のロコモーション進化の研究ですので、<飛べる vs. 飛べない>の構図は大変面白く感じるのですが、勿論、単に筋骨格系の適応を解析するのみならず、生理機構の進化変遷、また生態への適応、それを裏打ちする遺伝子の解析などを総合的に考えることが大切です。手前味噌になりますが、脊椎動物に関する深い知識を持ち、多面的に動物を理解する力を持つ、獣医学を修めた動物学研究者はその点圧倒的に有利には思います。尤も、獣医学を修めた者の殆どは medical 分野に進出してしまい、動物学に進む者はごく僅かであり、学問の道に入っても各人がこれまた自己の狭い専門属性を究めますので、互いの競争原理も働かず、凡庸な、novely の感じられない仕事を十年一日が如くに行い続ける例も少なくは無い様に見えます。 |
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飛べないトリ、翼を失ったトリの類いは、不遇な身に在り、自己の才能を発揮し得ない様な苦しい立場にある主人公を描く物語のタイトルとしても屡々利用されて来ました。院長は1970年頃に少年サンデ−誌に連載された『とべない翼』 を鮮明に記憶していますが、IQが高く自分の窃盗犯罪を一見温和な取調官の前で奸智で切り抜けようとする主人公が、家庭裁判所で悪質だと判定され特別少年院行きになるシーンが大変印象的でした。まぁ、油断させて相手にべらべら喋らせて本性を見抜くとの練馬鑑別所 (通称ネリカン)に出向いた家裁調査官の手口は刑事コロンボと同じに見えました。ちなみに、院長は以前は、ネリカンに道を隔て隣接する都立城北中央公園に昆虫好きの娘を連れてオオスカシバの観察などに頻繁に出掛けていました。 さて、前置きが長くなりましたが、次回コラムから、現生の或いは近年まで棲息していた飛べないトリ−翼に因る羽ばたき推進力を失ったトリ−についてざっと概観しつつ、各々のロコモーション特性についてもその都度考察を進めるとの段取りで進めましょうか?果たして、<翼を失ったトリの類いは、不遇な身に在り、自己の才能を発揮し得ない様な苦しい立場にある>のでしょうか? |
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